〜視点〜

変化に対応する経営を考える




干支の卯にちなんで、年初の賀詞交歓会では「ホップ、ステップ、ジャンプで飛躍する年にしよう」という挨拶がいたるところで聞かれた。今年こそ飛躍の年にしたいと願う経営者は多いことだろう。
地産地消―適地適産による発注元の海外移転で仕事が海外へ流失、発注価格は一物一価で海外の調達コストに対応し2〜3割低下、仕事量も受注単価も2〜3割減少、売上はピーク期の5〜6掛け、これが多くの企業の実情である。その一方で、自動機をフル稼働させても受注に対応できず、新たな設備投資に踏み切る企業もある。昨年から小誌では、「企業が変化にいかに対応するか」をテーマに、本欄でも何度も警鐘を鳴らしてきた。だが、明暗はより鮮明となり、グローバル化への対応を含めて企業力に差が生まれている。
先行きが見通せず、廃業・倒産の憂き目にあう板金加工業者も昨年から目立っており、板金業界の企業数はピーク期の2〜3割は減っている。一時期は3万社とも言われた企業数が、今や2万〜2万4,000社と雪崩状態で減少し続けている。
積極的に設備更新を行い、自動機をフル稼働している“元気印”の企業が10社に1社とすると、2,000〜2,400社程度まで絞られる。もちろん、今が良いからこれからも、とはならず、“元気印”の面子もドンドン変化すること間違いない。
こうした“元気印”の企業の特徴の1つは、リーマンショックがあったにもかかわらず、導入後5年未満の最新設備を備えていること。
2つ目が、ブランク加工設備が棚付きでライン化され、長時間稼働できるスペックであること。受注単価は安くても、無人稼働でランニングコストを下げることで、単価の安い仕事でも利益を上げている。
3つ目が営業担当者を専任で置き、積極的な提案営業を進めていること。
4つ目が、インターネットを通じてジョブマッチングで新規開拓を行っていること。また、社長が積極的に異業種や地域の製造業のネットワークに参加し、外部情報を積極的に取り入れていることも挙げられる。
そして5つ目が、30代前半の若手従業員が多いことである。
これら5つの特徴すべてを満たす企業は稀だが、“元気印”企業の中には3〜4つ当てはまる企業が圧倒的に多い。こうした企業に社員数は関係なく、わずか数名の社員でも、Webで受注したこだわりの製品を手づくりで納品し、利益を上げている例もある。逆に、Webで1,000社以上の口座を開拓し、逞しく受注活動に励む企業もある。自動機やベンディングロボットなどを多用して社員1人あたり300万円以上を売り上げる企業、大学・研究者など外部情報元とコラボして、新加工技術や新商品を開発し、ニッチな市場で成功している企業もある。
「日本の製造業は中国に飲み込まれて大変だ。頑張れ、製造業」といったスローガンも目に付く。だが、「大変、大変」という前に、変化に対応してチャンスを掴み、成長している企業があることにも着目しなければならない。今の環境を静的に見て“収縮”と捉えることもできる。だが、動的に見て“変化”と捉えれば、変化の先には“未来”がある。
今、企業に必要なことは、変化し続ける市場に対し、自分たちで何ができるのか、いつ、どこで、誰が何をつくるのか、という自明の問いかけを行うことではないのだろうか。
「誰が」という問いには、チャージという原単位が、「どこで」という問いには、国内外の選択がある。そうしたことをきちんと確認しながら、変化にどのように対応していけば良いのかを考えることが重要だ。