〜2011年主要業界別展望〜

ますます加速するグローバルシフト
2011年、板金業界はどうなる?
内需縮小・中国偏重・地産地消への対応がカギ



本特集では、主要な業界ごとの2010年の実績・動向と2011年以降の展望をまとめた。
2010年の業績は、ほぼすべての業界で前年を大きく上回っている。とはいえ、リーマンショック以前の2007年ピーク時と比べると、まだ60〜70%程度のボリュームで、回復は遅れている。しかも、2010年8月以降の急激な円高と株安による先行きの不透明感から、回復がさらに鈍化することも懸念され、2011年も厳しい環境は続きそうだ。
国内事情が厳しい中で、リーマンショック後の景気回復のけん引役となっているのは、中国をはじめとする新興国のボリュームゾーンである。内需の回復がままならない中、メーカー各社は中国をメインターゲットに据えてV字回復を目指した。だがそれも、急激な円高に加えて中国国内、特に沿岸部でのコスト高騰や地元企業の台頭などにより価格競争力は低下しており、日系企業の収益悪化や入札落選が相次いで報じられている。
円高を背景に、輸出型のビジネスモデルは完全に行き詰まりを見せている。メーカー各社は現地での生産・調達比率を高めており、地産地消によってコスト競争力を強化することで、グローバルコストに対応しようとしている。一方、国内生産分は試作・開発、高付加価値製品の生産へと特化する傾向がより顕著なものとなっている。

建設機械業界の2011年
新興国のインフラ整備需要が拡大、地産地消へのシフトが加速

2009-10 年建設機械本体出荷金額/(社)日本建設機械工業会より2009-10 年建設機械本体出荷金額/(社)日本建設機械工業会より
日本建設機械工業会の2010年9月建設機械(以下、建機)出荷額統計によると、内需(国内)は前年同月比11.9%増の624億2800万円、外需(輸出)は同105%増の133億6700万円、全体でも62%増と回復傾向にある。特に外需は、中国、東南アジアなど新興国向け輸出が好調で、中国が10カ月連続、アジア(中国を除く)が11カ月連続、欧州が10カ月、米国が5カ月連続で出荷額は増加した。国内生産における建設機械出荷金額は2010年度約1.5兆円の見込みで、2011年度国内生産伸び率は10%増が予測されている。
2011年も中国、インド、インドネシア、ロシアなどのインフラ整備による、油圧ショベルなどの建機需要の拡大は続く見通しだ。ただし、建機メーカー各社は、現地での生産体制を強化しており、新興国市場の拡大が、直接日本国内の板金需要とリンクするとは言えない状況だ。
日本、米国、欧州は、2011年に回復傾向に転じるとの見方もあるが、景気の不透明感などから回復の遅れも指摘されており、大きな伸びは期待できそうにない。
金融危機後の建機需要を後押しした新興国需要が地産地消へとシフトする中で、国内に残る仕事をとるか、新興国へ進出するのか、決断を迫られる時期にきている。

工作機械業界の2011年
ローエンド/ハイエンドの2 極化がさらに進行

2009-10年、工作機械受注統計/(社)日本工作機械工業会より2009-10年、工作機械受注統計/(社)日本工作機械工業会より
日本工作機械工業会によると、2010年10月の工作機械受注実績は内需が前年同月比61.1%増、外需は76.1%増、全体でも71%増で11カ月連続で増加した。ただし、内需は2009年後半から11カ月連続で増加しているが、増加幅は縮小。外需も円高による為替損益の影響、中国での伸びに一服感があることなどから、増加率は減少している。
もっとも、中国を中心とした新興国の工作機械需要は今後も拡大する見込みで、外需は底堅いというのが大方の見方だ。ただし、急激な円高を背景に他国製品との競争力が低下。加えて、中国など新興国各国が、工作機械の国内生産を推進しており、メーカー各社はミドル〜エントリー機種の現地生産を増強している。そのため2011年以降、新興国需要の拡大が日本国内の板金需要の拡大には必ずしもつながらない状況も予想される。
一方、国内生産については、工作機械メーカー各社が、大型機や複合加工機などハイエンド機種の開発・生産に比重を置くようになっている。そのため、国内需要に対応する板金業界には、多品種少量・変種変量生産・短納期対応が、ますます求められるようになると見られる。...

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