〜シフトグローバルが加速する建設機械と板金業界〜

建機生産のグローバル化に対応する
日本のマザー工場化に向けエンジニアリング強化



「最後の船に乗った」
岡本輝興社長岡本輝興社長
西江園一久専務西江園一久専務
「『岡本は最後の船に乗った』とよく言われます」と岡本社長は語っている。「中国への進出が10年前だったら、中国が伸び悩んでいたこともあって、とっくにつぶれていた。逆にリーマンショックによる大減産を経験した後だったら、お客さまから要請を受けたとしても二の足を踏んでいたでしょう」。
同社は建設機械や産業機械車両のエンジンフードやカバー、バケット、シートアセンブリーといった外観の板金溶接部品の加工・組立を行ってきた。2001年頃から、コストダウンを目的に受注部品の一部を中国から調達するようになり、顧客ニーズに対応するため、2007年6月には日本向けに加工品の輸出をメインに行う合弁企業「上海聯高金属製品有限公司」を上海に設立した。本来は上海工場を中国での生産基盤にしようと考えたが、中国での増産を計画する大手建設機械メーカーの要請に応じるかたちで同年12月、蘇州に独資で進出。中国国内の外資系建機・農機具メーカー向けにエンジンフードやカバーといった外観部品を製造する「岡本横浜(蘇州)機械有限公司」を設立した。
リーマンショックの影響が建機業界にまで波及したのは2008年11月頃で、蘇州の工場が本格稼働を開始したのはその直前の9月。「ぎりぎりのタイミングだったと思います」と岡本社長は語っている。
1年で売上5倍に
成長蘇州工場の立ち上げに要した初期投資額は約6億円。売上は、2008年12月決算で約1.2億円。それが、各建機・農機具メーカーの大増産と、前年9月に蘇州工場が立ち上がったことで今年は5倍強の売上が見込めるまでになっている。従業員も常駐している日本人社員を除き、すでに120名を超えた。
HDS-8025NTのステップベンド加工によりマシン間の移動工数、金型の段取り工数を削減HDS-8025NTのステップベンド加工によりマシン間の移動工数、金型の段取り工数を削減
「現在、中国にはキャビン専門や厚板を加工するサプライヤーは多いが、薄板を加工できる企業は少ない。また、お客さまは日本のサプライヤーに中国進出を促しているようですが、昨年の大減産と準備不足がたたって二の足を踏むところがほとんど。やむなくローカルベンダーに仕事を出しても品質や塗装などに問題があって、最終的には自社ですべてやり直さなくてはならない。こうした諸々の要因で当社に仕事が集中しているようです」(岡本社長)
西江園(にしえぞの)専務は、「今は急激に仕事量が増えている真っ最中。これからさらに伸びるでしょう。当社が取引している日系の大手建機・農機具メーカーは、すべて増産計画を打ち出しています。日系をはじめとした外資系のメーカーはいずれも中国生産を強化しており、各社とも前年比で2倍以上の増産を計画しています。引合いが多く、現有設備では近い将来、オーバーフローするのが目に見えている。それで新規の仕事は制限せざるを得ません。好況だからといって際限なく設備投資できませんから、上海工場に振り分けたりして、やりくりしていくしかありません」と語っている。 ...

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