〜視点〜

小惑星探査機「はやぶさ」の快挙は技術の重要性を再認識させた




小惑星「イトカワ」に着陸して小惑星の砂を持ち帰るなどの探査を目的とし、2003年5月に鹿児島県内之浦から打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が、7年ぶりに地球に帰還した。7週間にわたる迷走やエンジントラブル、燃料漏れなどトラブルが相次ぎ、一時は行方不明にもなった。予定より3年も遅れての帰還ということでも話題を集めた。とりわけ「イトカワ」探査という目的を達成し、カプセルを地球に送り出した後、自らの役割を終えるかのように大気圏に突入して燃え尽きた「はやぶさ」を擬人化することで、宇宙というロマンを改めて我々に彷彿させてくれた。持ち帰ったカプセル内に「イトカワ」の砂が入っているかどうかは今後の研究結果を待たなければならないが、この快挙には筆者をはじめ、感動を覚えた方も多かったことだろう。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)がHP上に公開している動画「小惑星探査機はやぶさ物語」を友人に紹介されて見た。2部構成で30分ほどの動画だが、久しぶりに感動を持って見ることができた。特に第2部の「祈り」は、背景のBGMも心に訴えるものがあり、私も数人の方々にこのサイトを紹介した。「イトカワ」の概要や「はやぶさ」の航路についての科学的な知識も得られるので、サイエンスムービーとしても十分に楽しめる。しかし、それ以上に、3億qも離れた小惑星まで旅をして地球に帰還するまでのプロセスを無事にやり遂げたJAXAの技術者の努力や日本の技術力に対して改めて誇らしく感じた。近所の小学4年生の少年にこの動画を見せると「こんな技術が日本にあるんだ。宇宙飛行士がカッコイイと思っていたけど、こういう人工衛星がつくれる日本はすごい」と率直に感動していた。
政府も今回の偉業で削減した予算を付け直し、「はやぶさ2号計画」が進められることになった。これを機に技術開発の重要性を改めて認識し、未踏技術への挑戦をこれからの成長戦略の中核に置くことをぜひ検討してほしい。昨年の事業仕分けでは宇宙開発予算をはじめ、スーパーコンピュータ開発予算などの科学技術予算に大ナタが振るわれた。子ども手当てや農家への所得保障など、民主党が掲げた「コンクリートから人への投資」のための財源確保の名目で、様々な事業予算の見直しが進められた。もちろん中にはムダと思われる事業や予算もあるが、これからの日本の成長を支える「技術」への投資に小惑星探査機「はやぶさ」の快挙は技術の重要性を再認識させた対しては、「なぜ2番ではいけないのか」ではなく、1番になることでしか得られないものがたくさんあることを認識すべきだ。成長戦略に必要な要素として「ヒト、モノ、カネ」が挙げられるが、ここで言うモノとはすなわち「技術」。これからの日本は優秀な人材と経済力に加えて、高い技術力を武器に持続的な成長を目指さなければならない。そのためには国も企業も「技術力」の強化に力を入れるべきだろう。
今回の「はやぶさ」の偉業は、日本の宇宙開発を支えてきた様々な技術のポテンシャルが世界最高水準にあることを裏付けた。そこで開発された要素技術は民生への転用も十分に可能で、波及効果も大きい。それゆえに政府は日本の長期成長戦略の要として「技術力強化」を掲げ、波及効果の高いメルクマールとなる未踏技術開発に事業予算を付け、思い切った開発を行うべきである。さらに「はやぶさ」の快挙を知った子どもたちが改めて宇宙に憧れ、宇宙開発を実現する技術開発に惹かれ、理工学回帰へと繋がれば効果はさらに大きなものとなる。「はやぶさ」は成長への道筋を見出せないでいる日本のパイロットになってくれた。