〜特集「次世代送電網―スマートグリッドと板金業界」〜
板金業界はスマートグリッドに対応するサポートマニュファクチャリング
蓄電池、変電・配電システム、EV充電器など電力インフラの必要品



バズワードとして普及したスマートグリッド
ハセテックの出力50kWの急速充電器(「第1回EV・HEV駆動システム技術展」2010年1月開催)ハセテックの出力50kWの急速充電器(「第1回EV・HEV駆動システム技術展」2010年1月開催)
スマートグリッドは、「電力系統に双方向型の情報通信を組み合わせたシステムとサービス」(三菱総研)と言われている。
オバマ氏がアメリカ大統領選に当選した2008年11月以降、同氏が選挙を通して訴えてきた「グリーンニューディール政策」の一環であるスマートグリッド構想は、一躍脚光を浴びるようになった。日本国内でも連日「スマートグリッド」が話題を集め、行政・企業はスマートグリッドによる低炭素化社会実現へ向けた有望性と経済性を訴えてきたが、具体的な内容が曖昧で範囲が広すぎ、しばらくはバズワード―実態が明確でない流行語としての色彩が濃かった。
スマートグリッドという言葉が一般化してからおよそ1年半、ようやく次世代の電力インフラ網のイメージが具体性を帯びてきた。

スマートグリッド構想の整理・分類
昨年7月に発表されたアメリカ・GTMリサーチ社の145ページにおよぶレポート「2010年のスマートグリッド:市場セグメント、アプリケーションおよび業界のプレイヤー」は、「スマートグリッドは膨大でとらえどころがなく、混乱に陥れるものだった」としたうえで、概念の整理を試みている。
同レポートはスマートグリッドの構成を「電力層」、「通信・制御層」、「アプリケーション層」の3つの層に分類している。板金業界にとって関連が深いのは主に「電力層」、続いて一部の「通信・制御層」である。
さらに、重要な市場区分として(1)AMI、(2)デマンドレスポンス、 (3)グリッド最適化、(4)分散電源、(5)蓄電池、(6)PHEV(プラグインハイブリッド車)、(7)先進ユーティリティ制御システムとスマートホームとネットワーク―の7つに分類している(表1)。本稿ではこの分類に沿ってスマートグリッド関連産業を概観する。

アメリカではスマートメーターとデマンドレスポンスを重視
表2 想定される主なスマートグリッド技術関連産業/次世代ネットワーク研究会発表資料(2010年4月)を基に編集部が作成表2 想定される主なスマートグリッド技術関連産業/次世代ネットワーク研究会発表資料(2010年4月)を基に編集部が作成
スマートグリッドに対する具体的な取り組みは、アメリカとEUとで異なっている。
アメリカでは電力設備の老朽化が進み、「1軒あたりの年間停電時間が約90〜100分」(東京電力)で、国家安全保障という面でも脆弱。EU加盟国16カ国が電力網の近代化を推進している中、電力インフラ分野における国際競争力を確保することも課題とされている。電力の安定供給を最優先としており、スマートメーターの普及(表1の(1)に相当)による自動検針システムの構築と、デマンドレスポンス(表1の(2)に相当)を組み合わせることが初期の重要テーマ。スマートグリッドが脚光を浴び始めた当初、日本の電力網がすでに高度な通信機能を備えていることを理由に一部で挙がった「日本にはスマートグリッドは不要」という声は、アメリカがあくまでも当座の目標としているスマートグリッドのイメージに立脚している。
2009年2月に成立した「アメリカ経済再生法」にはエネルギー関連への多額の投資が盛り込まれており、スマートグリッド関連プロジェクトならびに電力局への融資として計110億ドル(約9,900億円の予算が割り当てられた。...

つづきは本誌2010年6月号でご購読下さい。