〜特集「グローバル化するATMのモノづくり」〜

ATMの生産は中国シフト
“総合力”でメリットを提供

編集部



山田敏明取締役副社長(右)と青柳光保取締役生産管理部長(左)山田敏明取締役副社長(右)と青柳光保取締役生産管理部長(左)
「分社グループ」の板金企業
同社はATM、CD、発券機、通信機器、医療機器、制御盤・制御装置などの筐体・ケースの機構設計から精密板金加工、塗装(溶剤・粉体)電気組立までを一貫して行う能力を備えている。21社・2,500名を擁する「分社グループ」内の1社で、グループ内には制御装置、ケーブル、ハーネス加工の専門メーカーであるファナックマグトロニクス(株)、基板実装からユニット製造までの高精度なアセンブリができる(株)トライタームがあり、部品調達から製品の完成までを請け負う総合EMSメーカーでもある。
「『分社グループ』は敗戦後、東京都大田区で酒井邦恭翁が設立した大陽塗装工業(株)(後の大陽工業(株))が中核となって、板金・プレス、産業用プリント配線基板、コンピュータ向けソフトの開発と業種を拡大してきました。会社経営に関して『大きくならない自由』をテーマに、事業部制にし、売上高に応じて利益を社員に分配する制度を定着させました。一時はグループ企業が40社を超えましたが、バブル崩壊を経て現在はこのような(図1)体制になっています。当社とファナックマグトロニクス、トライタームの3社は、“総合力”(図2)でお客さまにメリットを提供できるEMS企業グループを構成しています」と山田副社長は同社創業の理念を語っている。

筐体組立が終了して出荷を待つATM筐体筐体組立が終了して出荷を待つATM筐体
ATM筐体を製作
主力製品はATMを中心とした金融端末装置で、自動発券機、AED(自動体外式除細動器)・心電図・超音波診断装置などの医療機器、強電盤、通信機器などの筐体・ケース・フレームなどを製作。中でもATMは国内大手3社の1社から長年に渡って受注しており、国内ATMの普及期には月産1,000台以上の筐体を製作、売上の50〜60%を占めた時期もあった。しかし、金融ビッグバンの影響で国内支店の統廃合が進み、ゆうちょ銀行やコンビニ銀行などの新規需要も一巡、国内はリプレース需要のみとなってきた。その一方で中国をはじめとする新興諸国の急速な経済発展により中間所得層―いわゆるボリュームゾーンの人口が増大。商業銀行のネットワークが拡大し、それに合わせてCDから還流式のATMへの置き換え需要が増え、日本の大手ATMメーカーは「地産地消」に対応して中国・フィリピンなどに工場進出、地元企業や日系企業を使って現地生産をするようになった。...

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