〜特集「グローバル化するATMのモノづくり」〜

ATMの生産は中国シフト
量産設計後は型化・モールド化が進み、板金比率は低下?

編集部



加工、組立が終了して出荷を待つATM筐体加工、組立が終了して出荷を待つATM筐体
精密板金を代表する製品のひとつであったATMをはじめとする金融端末装置の筐体・機構部品の板金製造の分野において、中国やインドなどの新興市場の拡大により、シフト・グローバル現象が急速に進んでいる。
2002年からの円安バブルによって、日本経済が輸出ドライブ型の好景気に沸いていた頃から、それまで製品輸出で海外市場を拡大してきたATM業界は新興市場を中心に「地産地消」傾向を強め、コスト競争力を強化するために型化(プレス化)・モールド化によって、量産が可能な製品を中心に海外生産へシフトするようになった。2008年のリーマンショックを経て円安バブルは崩壊し、円高が加速。さらに中国経済が台頭し、可処分所得が増えた中間層を中心に購買力が高まり、個人消費を中心に内需主導で経済が急速に拡大し始めたため、中国国内のATM需要も急速に伸びた。そこで、NCRやDiebold、Wincol-Nixdolfなど欧米系のメーカーに対抗して日本のATMメーカーも中国での生産を強化するとともに、有望な市場という判断からボリュームゾーンへ向けた新商品の投入を計画するようになった。
その結果、ATM生産は国内向けのリプレース需要を除くと、多くが中国・フィリピンなどで生産されるようになっている。さらに価格破壊が進んだことで、コストダウンを進めるためには海外生産は今や必須。その結果、国内で生産されるATMは、試作などの一部を除けば、まるめロット100台を超えると、型化やモールド化が積極的に検討されるようになっている。そこで、ATM業界のシフト・グローバルの状況を取材し、板金モノづくりのトレンドを調べた。

富士通フロンテックのATM「FACT-V X100」(国内販売のみ)富士通フロンテックのATM「FACT-V X100」(国内販売のみ)
多機能化するATM
「現金自動預け払い機」と呼ばれるATM(Automated TellerMachine) は、紙幣・硬貨・通帳・磁気カードなどの受入口・支払口を備え、金融機関や貸金業者、現金出納を行う業者の提供するサービスが、顧客自身の操作によって取引できる機械である。当初は銀行・郵便局の店舗に設置され、普通預貯金の預け払いに用いられていたが、最近では金融機関はもとより、コンビニやスーパー、駅、小売店や公共施設、企業などに幅広く設置されている。
普及しているATMは「還流式」と呼ばれ、キャッシュカードを識別し、入金された紙幣を機内の金庫室に保管するとともに、支払に際しては同じ金庫室から出金することで、紙幣を還流させる銀行業務も兼ねており、預け入れ・支払に際して間違いが起こらないように紙幣の識別機能を備えている。また、普通預金以外の取引や現金を介さない通帳への記帳、振込みなどの取引も広く取り扱えるように進化しており、今では「自動取引装置」、「自動窓口機」などと呼ばれる機種も開発されている。...

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