〜特集「堅調な鉄道車両業界」〜

国際的に注目される鉄道車両業界
2016年には20兆円市場に拡大の見込み


アメリカの高速鉄道計画図(アメリカ運輸省発表資料(2009年7月16日発表)より作成)アメリカの高速鉄道計画図
(アメリカ運輸省発表資料(2009年7月16日発表)より作成)
世界の高速鉄道整備計画
ヨーロッパ鉄道産業連盟によると、世界の鉄道関連産業の市場規模は2005〜2007年の平均で年間1,230億ユーロ(約16兆円)。2016年には1,540億ユーロ(約20兆円)に達すると見込まれている。急速な経済成長と人口増大で交通・輸送網の整備が急務のBRICsやASEAN諸国などの新興国、省エネ化とCO2排出量の削減を急ぐとともに公共インフラの整備により景気回復の促進を図る欧米などの先進国―多くの国で国家プロジェクトとして鉄道の新設計画が相次ぎ、脚光を浴びている。
グリーン・ニューディール政策に鉄道整備計画を盛り込み、火付け役となったアメリカのオバマ大統領。今年2月、鉄道分野に80億ドルの予算充当を決定し、さらに今後5年間、毎年10億ドルの予算を確保して計130億ドルを投資する考えを示している。全米11地域に延長550〜3,720kmの路線を新設する計画(図)で、今後は激しい受注競争が展開すると予想される。

鉄道車両の年度別・需要先別生産実績推移((社)日本鉄道車輌工業会「生産推移統計データ」より)鉄道車両の年度別・需要先別生産実績推移
((社)日本鉄道車輌工業会「生産推移統計データ」より)
鉄道整備プロジェクト受注の前哨戦と見なされているのが、今年12月に入札が実施されるブラジルの高速鉄道計画。全長約510kmで、同国でサッカーワールドカップが開催される2014年の開業を目指している。総事業費は346億レアル(1.7兆円)。日本の鉄道関連企業は、三井物産を幹事社に、車両の川崎重工業、信号・通信設備の三菱重工業、東芝が共同で新幹線の売り込みを目指している。同国では、2016年のオリンピック開催地にリオデジャネイロが選出されたことで、鉄道網の整備の必要性がさらに高まっている。
中国では、2020年までに1万6,000kmの高速鉄道網を整備し、鉄道営業総延長をこれまでの1.5倍の12万kmにする計画。柱となるのは東西南北の主要都市を結ぶ「四縦四横」と呼ばれるプロジェクトで、北京〜上海間を結ぶ高速鉄道(約1,300km)などが含まれる。車両導入台数は4,800両と見込まれている。

こうした鉄道市場への投資の増大により、車両本体(構体)を製造する鉄道車両メーカーだけでなく、内外装、ブレーキ制御装置、ドア開閉装置、受配電装置、蓄電池、さらには信号・通信システム、送電設備、架線の敷設、駅舎の建設・設備など、関連装置メーカーや部材のサプライヤーも恩恵を受けると見られる。...

つづきは本誌2009年11月号でご購読下さい。