〜特集「MF-Tokyo 2009(プレス・板金・フォーミング展)」〜
―板金市場のトレンドを探る―

«寄稿»MF-Tokyo 2009開催にあたって
もの作りについて

電気通信大学 知能機械工学科 教授 村田 眞



電気通信大学 村田 眞教授電気通信大学 村田 眞教授
大学を卒業し、機械工学科で塑性加工研究と、生産加工に関する授業を行い、定年まで4年を切るようになったが、この40年で私のもの作りへの考え方がかなり変化してきたように思う。大学は世の中や企業とは別世界のところもあるが、生産加工に携わる者としては、むしろ世の中より1歩でも前を歩かなければならないと思っている。現実は世の中の流れに追いついていくのが精々のようである。
大学で生産加工に関する授業を受けた時、もの作りの大前提として3つの項目を教わった。1つは製品が持つべき機能を満たすこと、2つは安全であること、3つは安価で作ることがあげられた。40年前の事で、高度経済成長の狭間にあり、まだまだその機械が十分に機能を満たす製品を作れない状態で、まだまだ欧米の優れた製品の模倣をしていた時代であった。このころから日本車の輸出が始まったが、欧米の車とは品質の点で格段の差があった。日本製品はまだ安いことを武器として販売していた。しかし、日本人技術者は真面目さと勤勉さをもち、良い製品を作ることに努力し十数年で欧米の製品より優れた製品を作る技術を身に付け、MADE IN JAPAN が品質の良さを表す言葉になった。
世の中ではもの作りこそが日本の将来を支えていくといわれているが、機械工学を学ぶ学生でさえものの作り方を知らない学生が多い。現在の大学の機械工学科カリキュラムに問題があるような気がする。
複雑になった最近のもの作り
最近のもの作りは複雑になってきている。たとえば、製品は最終的にはゴミとなるので、地球に負荷を与えないため、リサイクルを考えて材料と製造方法を選択すべきである。また、製造過程やそれをリサイクル処理するまでの、エネルギーとCO2の排出量等の環境に与える負荷を減らすようにすべきである。CO2の排出量が少ない製品が良い製品となり企業イメージを上げることとなる。また製品に欠陥が生じればその製品だけでなく、企業全体の信用を落とすことになるので、製造者責任(PLProducts Liability)を常にエンジニアは考えて、設計、製造や検査等を行うべきである。さらに優れたデザイン性や他の製品に見られない優位性や特異性を持った製品を販売しなければ、消費者に見向きもされない。もの作りに携わる人々にとって難しい時代になったと痛感する。これらのことに立ち向かう学生を育てていくことが、工学部の教員の使命と思う。
日本経済がここ20年冴えないのは、真面目にものを作る精神が欠如したせいである。...

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