〜特集「MF-Tokyo 2009(プレス・板金・フォーミング展)」〜
―板金市場のトレンドを探る―

«寄稿»MF-Tokyo 2009開催にあたって
低炭素社会を目指す「MF-Tokyo 2009」

東京大学 名誉教授 木内 学



東京大学 木内 学 名誉教授東京大学 木内 学 名誉教授
1.はじめに
(社)日本鍛圧機械工業会主催・第1回「MF-Tokyo 2009( プレス・板金・フォーミング展)」が開催される。我国の鍛圧技術・鍛圧機械産業の目覚しい発展の歴史に、大きな足跡を刻む意義深い催しである。関係各位の多大なご努力に心より敬意とお慶びを申し上げたい。この機会に、「MFTokyo2009展」が掲げる基本理念であり大きな目標でもある「低炭素社会の実現」について、2、3の私見を述べる。

2.新しい優位性の獲得
エネルギー・資源の枯渇、食糧不足、環境破壊等の深刻化が憂慮される中で、我国の産業技術は、地球環境保全へ向けて、先導的に取り組むことが何よりも重要である。環境保全効果が卓越し且つ経済性にも優れた技術を、他に先駆けて見出し、手にすることによって、我国の産業は、世界市場において、新しい価値の創造に関する確かな優位性を獲得できる。同時に、環境対応技術の高度化は、その成果が人類にとって普遍的利益をもたらすという意味において、我国は、国際社会において、精神的・文化的・人道的優位性を高めることが出来る。すなわち、国と国民の品位・品格、理想・志の高さを示す場であり機会でもある。他の追随を許さない環境調和を達成できる高度な技術は、社会的・人道的に世界を先導する切り札となる。
3.新しい産業の創生
環境負荷の最小化は、生産活動に投入する資源・エネルギーの最小化と同義である。さらに、この最小化は、人間が作り出す全ての有形・無形人工物のトータルライフサイクルの視点から見たコストの極小化につながる。この事実は、「あらゆる無駄を排除して生産性を高める」という産業や技術が本来目指す経済的合理性の追及と一致する。加えて、資源・エネルギーの消費最小化は、社会の持続的発展に最も大きく貢献する。
環境負荷の極限的低減を目指す技術的取り組みは、我国に、最も強い経済的優位性をもたらす。すなわち、先導的な環境対応技術は、我国に新しい産業競争力をもたらす。のみならず、環境保全への対応こそが、21世紀の人類の直面する最大の課題であることから判断して、優れた環境対応技術の開発は、有望産業開拓への道であると断言できる。
その際、以下の視点を堅持することが望まれる。...

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