〜特集「環境負荷低減に対応したモノづくり」〜

産官学連携によりEV開発に着手
地域性を最大限に活かしたモノづくり




浜野慶一社長浜野慶一社長
東京都墨田区の住宅地に、外壁をカラフルに彩られた板金・プレス工場を構える浜野製作所。2008年、同社は早稲田大学、墨田区との産官学連携プロジェクトで電気自動車(EV)の共同開発・製作をスタート。これまでに2台のEV車が完成した。
1台は早稲田大学発ベンチャーの(株)早稲田環境研究所(社長・小野田弘士氏)からの受注生産品で、早稲田大学理工学部の永田勝也研究室が開発した1人乗りULV(UltraLightweight Vehicle:超計量小型自動車)。同研究所ではこれまでにもEVの生産実績があり、重量を抑えるためにFRP(繊維強化プラスチック)で製作したシャシーは旧型のものを流用し、それ以外のフレームや補強金具といった金属部品の加工と車体の組立を同社が担当した。ULVの最高時速は40qで、一度の充電で40〜50q走行できる。
もう1台は、2007年に墨田区と早稲田大学、地元企業などがEVの開発を目的に発足した「すみだ次世代モビリティ開発コンソーシアム」プロジェクトの一環で、デザインを公募し、早稲田大学のULVの技術を融合して、浜野製作所を筆頭とする地元企業と共同で開発したオリジナル製品。運転者1名と隣席1名、合計2名が乗車できる。
モーター、電源、電池などの駆動部は早稲田大学からの提供を受け、タイヤ、ウィンドウ、シート、ステアリング、ヘッドライトなどは既製品を使用。車体全体の設計から、ボディ、シャシー、フレーム、ドアーなどの鋼板材料(SPC)で加工した製品、補強金具などのステンレス製品はすべて浜野製作所が板金加工によって製作。塗装は他社に依頼したが、設計から板金加工、溶接・組立から電装関係の組み付けまで、製作工程の90%を同社が担当した。
今年3月に導入したLC-1212αWNTによるレーザ加工今年3月に導入したLC-1212αWNTによるレーザ加工
産官学連携で次世代モビリティを開発
「自動車メーカーに対抗しようというつもりは毛頭ありません」と浜野社長は語る。
「すみだ次世代モビリティ開発コンソーシアム」プロジェクト発足のきっかけとなったのは、2011年に墨田区押上業平橋地区に完成する世界一の高さを誇る電波塔「東京スカイツリー」。東京スカイツリー社によれば、開業初年度の来場者は540万人、次年度以降の30年間は年平均約270万人を見込んでいる。その一方で、墨田区には国技館、江戸東京博物館、旧安田庭園の他、吉良邸跡、芥川龍之介生育の地、勝海舟生誕の地といった観光スポットがあるものの、区内に点在しており、面的につなぐ観光交通システムが整備されていない。そこで墨田区は、2002年12月包括提携を結んでいる「墨田区・早稲田大学産官学連携事業」の延長として同プロジェクトを発足。東京スカイツリーを中核に据え、区内の観光スポットを周遊できる次世代観光交通システムを墨田区、早稲田大学、地元企業の産官学連携で構築しようと計画した。...

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