〜視点〜

ECO-Q,C,D
環境負荷低減に努力する企業が選ばれる




筆者は昨年9月15日に発生したリーマンブラザーズの経営破綻に端を発した世界同時不況を「パラダイムシフト」と捉えた。そして、オバマ大統領が危機を脱出するに際して掲げたグリーンニューディール政策の中核となったクリーンエネルギー産業を中心とした新産業の台頭が世界経済をリードするようになる。板金業界も、時間が経過すれば経済は再び元に戻るという考え方を捨て、新しいパラダイムに向けた活動を開始しなければならない、と主張してきた。こうした考え方は徐々にではあるが業界内に浸透してきている。
ここへ来て顕著になったのが地球環境負荷低減に対する積極的な取り組み。そのひとつは今年度税制大綱の目玉になっている即日全額償却制度を採用した平成21年度のエネ革税制改正。さらには省エネ設備導入に際しての各種助成制度や優遇税制を活用し、環境改善に取り組む企業が目立ってきたことである。最近、本誌で社屋の屋上に太陽光発電装置を設置して工場内で使用する電力の一部を再生可能エネルギーで賄う事例を2件ほど紹介した。いずれの企業もNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「エネルギー使用合理化事業者支援事業」を活用し、工場・事業所における省エネルギー設備・技術の導入に際して設備費の1/3の補助を受けている。大規模な工場では1,200枚ほどの太陽光パネルを屋上に設置、月間に100kWの電力を発電し、使用電力の20%あまりを再生可能エネルギーで賄う例も現れている。
こうした企業は共通して再生可能エネルギーの活用でCO2排出量を削減し、環境負荷低減に貢献する会社ということ大きくPRしている。環境負荷低減の効果を具体的数値に表して、「当社へ発注していただくと、Q,C,Dは当たり前。さらに当社では製品1個を製造するのに使用する電力を削減することで1個の製品製造に際して発生するCO2を○○%削減しております」というセールストークに活用している。最近では大手企業でも国内出張に際して公共交通機関の使用を義務付け、社有車や自家用車での移動を禁止する企業が現れている。大手企業にとっては、こうした企業に仕事を発注すればQ,C,Dだけではなくて、CO2発生も抑制することができる。社会的責任に対する認識が高い企業として発注先の選別に有利な条件となる。
A社では受注量がピーク比で半減ECO-Q,C,D環境負荷低減に努力する企業が選ばれるしているにもかかわらず、省エネ投資の手を緩めず、エコマシン導入に積極的に取り組んでいる。B社では材料費をはじめ、徹底したVE活動を実施することで大幅なコスト削減を実現するとともに、時間短縮による経済効果としてエネルギー効率改善を掲げ、“ECO”を提案営業の柱にするようになっている。
これまで大手企業が協力工場を選別するときの絶対条件はQ,C,Dだった。ところがISO14000、国際的な環境規格の取得が義務付けられることで、最近では“ECO”が付かなければ選ばれることが難しくなる傾向も現れている。いわゆる“ECO-Q,C,D”である。仕事が激減する中で他社との差別化を目指す企業にとって“ECO”はまたとないセールスポイントとなっている。これからは環境負荷の低減に努力する企業がエクセレント・カンパニーとなっていく。ここにもパラダイムシフトが起きている。