〜視点〜

台湾からの団体旅行


 今年のゴールデンウイークは悪天候にもめげず、行楽地は多くの家族連れなどで賑わった。しかし、一時的に下がっていたガソリンの暫定税率が4月30日の国会で元の税率に引き上げられたため、4月29、30日のガソリンスタンドは安いガソリンを満タンにしようと考えるドライバーが給油のために長い列を作った。筆者もこの休みの間に行楽地とやらに出かけたが、その温泉地で出くわしたのが台湾からの団体。こちらが夕食も終えてゆっくりと温泉につかろうと乗ったエレベーターに乗り合わせてきたのが台湾の団体さん一行だった。およそ40名の団体が関西観光を終えて箱根への経路の途中で中部地区の、この温泉地にやってきたのだそうだ。金曜日の夜便で来日、月曜日の午前便で帰国する3泊4日の観光ツアーで関西から箱根を回って帰国するのだという。エレベーターで乗り合わせたのが縁でお風呂も一緒になったのだが、片言の日本語と英語で話すうちに打ち解けたのか、聞いてきたのがこの温泉の効能。この温泉には温泉成分20%、80%は真水と表示されている。しかも、ろ過して還流させるタイプとも書かれている。一時期、真水をボイラーで沸かしていたにも関わらず○○温泉と詐称していた温泉旅館が相次いで見つかり、それ以後は温泉という表示に関しては厳しい規制が行われている。にも関わらず、この団体の人たちはこの温泉が日本でも有名な温泉と勘違いしているようで盛んに効能を聞いてくる。うっかり本当のことも言えないので、初めて来たので良く判りませんと応えておいたが、なんとなく釈然としなかった。最近は空港でも新幹線のターミナルでも台湾や中国、韓国からの団体と行きかうことが多い。箱根などは、海外からの観光客の方が多いと感じる時間帯もある。日本への関心が高まっている証拠でもあり、また外貨も稼いでくれるのだからこれは大いに歓迎しなければならないが、迎える日本側のホスピタリティーが温泉の表示ひとつを取り上げても今ひとつ心配だ。
 台湾ご一行は翌朝7時には朝食を終え8時には旅館を出発して箱根へと向かっていった。今日は富士山を見るのが楽しみだと昨晩知り合った一行の方が話していた。きっと霊峰富士は海外からの観光客にも雄大な姿を見せてくれるのだろう。ところで、風呂での話の続きだが、この団体に参加された大半の参加者が台南にある会社の従業員の人たちで慰安会のような形で日本へ来たという。参加費用はどのような形で賄われているのかは聞き込めなかったが、台湾企業でも慰安会のような福利厚生が行われるようになっているようだ。そうであるとするならば台湾企業でも社員のモチベーションやモラル改善を真剣に考え始めるようになったのかもしれない。
 最近日本では懇親会というと若い社員を中心に強制参加ですか、と聞いてきたり、欠席するケースが増えてきて、社内行事として実施することが難しくなっている企業も増えていると聞く。アフターファイブまで会社に拘束されたくない、といってしまえばそれまでだが、社員間のコミュニケーションや中小企業では企業トップの人間性を垣間見るためにも慰労会は欠かすことのできないイベントと考えられている。以前の日本でも盛りだくさんのスケジュールを織り込んだ慰安会が企画され、移動に疲れた、と記憶も残っている。ゴールデンウイークに出会った台湾の団体さんを見て、一期一会の縁(えにし)の不思議さを感じました。