〜視点〜

中国、韓国で開催された
展示会は産官連携が目立つ

 4月は入学式や入社式と新年度が始まるスタートの月でもあるが、産業界にとっても新年度の景気動向を占う様々な展示会が国内外で幕開する月でもある。板金業界では4月8日から13日まで韓国でSIMTOS2008(韓国国際工作機械見本市)が開催されたのに引き続いて、21日から25日までは中国・北京でCCMT2008(China CNCMachine Tool Fair)が開催された。
 サブプライム問題に始まったアメリカ経済に対する信用不安の影響でドル安が進行する一方で原油高をはじめとした原材料の高騰で世界経済の先行きにも黄色信号が灯り始めており、韓国、中国を中核とする東アジア経済が今後どのように変化していくのか注目される中での開催となった。8月の北京オリンピック開催を前にして世界の製造工場として活発な設備投資が続いている中国経済は様々な負の資産が増大、これからの経済成長に懸念材料も出てきている。そのような中でCCMTには、中国政府が進める経済開発の国家プロジェクトに関連した企業集団が多数参加、プロジェクト推進に必要な生産財の調達やモノづくりに役立つ情報収集に力を入れていた。中国では鉄道、港湾、造船、航空機製造、自動車生産など16大プロジェクトが産官連携で進められている。中国経済の基盤づくりに欠かすことのできない産業が国家プロジェクトとなっており、CCMTは16大プロジェクトに必要な生産財の見本市となっていた。基盤産業を振興するのが目的だけに出展者は基本的には中国国内企業などに限られており、日本企業を含め海外企業の出展は中国の現地法人が出展窓口となっても数が絞られていた。日系企業として出展を許されていたのはアマダを含めてファナック、ヤマザキマザックなどであり、会場内ではプロジェクトに参加する企業集団のトップが訪れ活発な商談が行われた。
 また、SIMTOS2008では2月の大統領選で当選した李明博(イ・ミョンバク)大統領が経済界出身ということで低迷する韓国経済の活性化に向けて積極的な政策を打ち出すのではないかという期待が集まっていた。会期中の9日には総選挙が行われ与党ハンナラ党が過半数を制したことで、これからの政策遂行にも力を得てことになる。しかし、ウォン安や原油をはじめとした原材料価格の高騰で造船や自動車を除く産業は低迷しており、先行きに関しては必ずしも楽観できるものではない。特に若年層の失業率が11%以上と平均を大きく上回る雇用情勢の中で、少子化が進む韓国では大きな社会問題が起きている。日本ではニートと呼ばれる、働かない若年世代が韓国でも増加しており、内需振興と合わせて若年世代に対して働くことの意義や働く場所の提供などが求められている。その一環としてモノづくりへの積極参加を呼びかけるようになっている。李明博大統領も産業の母である工作機械産業の振興には力を入れており、当初は8日の開会式に合わせてSIMTOS会場を訪問するという計画もあった。しかし、総選挙や15日からの訪米を控えて来場はキャンセルされたが、新大統領がSIMTOSを重要視している姿勢が出展者にも伝わり、見本市の盛り上がりには役立ったようだ。
 日本でも国際工作機械見本市には経済産業大臣が視察に訪れることはあるが総理大臣が来場することは例がない。結果としてキャンセルされたとはいえ、就任間もない大統領が視察に訪れるという計画を考えても、工作機械をはじめとした製造業の新興に力を入れる新政権の様子が伺われた。
 工作機械の出展内容を見ても性能やデザインは日本メーカーと比べて遜色はなく、多機能化や大型化など日本のメーカーがたどった道を追いかけてきている。KOMMA(韓国工作機械工業会)でも工作機械産業を高度化するため2020年を目標とした「Global Vision2020」を策定しており、今後は日本のライバルとして見過ごすことのできない存在となっていくと考えられる。経済の先行き不透明感が増す中で東アジアを主導する中国、韓国で開催された展示会の勢いに改めて驚かされた。