〜視点〜

年初から業界再編が始まる
生産財業界

 年明け早々から板金機械をはじめとした生産財業界では国際的な業界再編につながる発表が相次いでいる。建設機械トップのコマツは発行済株式総数の29.33%を取得していた工作機械メーカー、日平トヤマの全株式を総額429億円でTOB(公開買い付け)することで、100%子会社化することを発表した。同社は自動車向けの専用機からマシニングセンタ、研削盤などの工作機械、さらには自動車の試作にか欠かすことのできない3次元レーザ加工機や半導体ウエハーのスライシングマシンでは世界トップのシェア持っている。また、2次元レーザ加工機でも国内3位グループの実績を持っており、年商は07年3月期で826億円。一方のコマツは産業機械事業では自動車向けの大型プレスを製造するほか子会社のコマツ産機でACサーボプレスや板金機械事業を行っており、産業機械部門の2007年3月期の売上高は1,029億円となっている。これによってコマツグループのプレス、工作機械、板金機械の売上高は1,855億円となり国内ではアマダ、ヤマザキマザック、森精機、オークマなどと並んで5位以内に入るトップメーカーとなった。コマツは2010年3月期に売上高営業利益率15%以上の達成を目指す新中期経営計画「Global Teamwork for 15」をスタートしており、産業機械事業に関しては金沢港工場の竣工と日平トヤマとの協業効果実現を掲げている。同社の取締役専務執行役員で(社)日本鍛圧機械工業会会長でもある鈴木康夫氏は「世界的な資源不足で鉱山開発が進み、鉱山機械が売れる。資源を採掘すると道路や鉄道、港湾、飛行場などが整備される。道や鉄道ができて自動車や鉄道車両が動き出すとそこに町ができ、町ができるとビルなどの建物が建つ。建物には空調、受配電設備や昇降機が必要になる。それらの製造にはマザーマシンである工作機械、プレス板金機械が必要になっていく。世界的に鉱山機械、建設機械が売れ、それを追いかけてマザーマシン、生産財が売れていくのは間違いない」と伸べており、成長戦略を持続するためにも産業機械事業の拡充は欠かせない柱となっている。
 連結売上高2兆円、営業利益2,500億円を上げるコマツの産業機械事業への取り組みは世界的な生産財の業界再編にもつながる。その一方で欧州では1月末にイタリアのプリマ・インダストリーによるフィンパワー(フィンランド)の買収が発表された。2社あわせて売上高4億ユーロ(約640億円)、従業員1,700名規模の会社が誕生することになり、Trumpfに次ぐ欧州2位グループが誕生することになった。発表によれば買収はフィンパワー社株の91.64%を保有するスウェーデンの投資会社EQT III社から全ての株式と、その他の少数株主の保有する株式も含め100%の株式を取得するという。買収金額は1.7億ユーロ(約270億円)。フィンパワーの2007度仮決算は売上高2.4億ユーロ(384億円)、税引前利益23.6百万ユーロ(38億円)。買収資金は銀行借入で行われるという。プリマは3次元レーザ加工機をはじめとしたレーザ加工機のトップメーカー。一方、フィンパワーはパンチングプレス、パンチ・レーザ複合機、レーザ加工機、プレスプレーキ、パネルベンダーを製造する板金総合メーカー。合併によってレーザ加工機を中心に欧州にTrumpf、LVDに続く板金総合メーカーが誕生することになる。プリマは日本においては新日本工機と提携関係にあり、日本でこの合併には注目が集まるものと考えられる。
 サブプライム問題に端を発して景気の先行きに不安が高まる中で景気の先行指標といわれる産業機械の業界再編が加速されると考えられる。