〜視点〜

変化に対応できる
企業力、経営力

 ここ5年ほど続いた景気にも黄色信号が灯り、2008年は板金業界にとっては厳しい年になりそうである。本誌上で何度も繰り返しているが景気変動の時こそビジネスチャンス。経済構造が大きく変化する時だけに発注元も部材調達の手法や調達先の見直しを進めている。それだけに発注元から指名される企業になれるか、振り落とされ淘汰されてしまう企業になってしまうのか企業にとっても大きな瀬戸際を迎えている。2000年のITバブル崩壊後、発注元はモジュール調達を進め、設計上流から加工、組立まで一貫して対応できるサプライヤーに仕事を集中する1社購買の傾向を強めている。そして、そうしたトレンドはあらゆる業界へと拡大する傾向を示している。
 1月号の新春アンケートでも、発注元がモジュール調達に対応してセット生産に対応できる企業を目指すという回答企業がかなりの割合に登り、板金業界にも設計上流から提案営業で仕事を受注して組立後は発注元の組立ラインに連動して納品したり、納品先や需要家、施工現場に直接出荷するケースが目立っている。
 11月にアメリカ中西部の板金工場を取材した際も、日本以上に厳しい競争にさらされたアメリカ板金業界ではレーバーチャージの安い中国や、メキシコを自分たちのサプライチェーンに組込み、自社の強みである3次元CADを使ったVE/VA提案でOEMあるいはEMS型企業として再生し業績を拡大している企業が勝ち残っていることがわかった。板金はもちろん、プレス、機械加工から塗装、シルク印刷、組配までに対応するようになっている。従業員が100名、300名という企業規模を備えた企業が増加している。
 日本でも板金加工設備以外に機械加工設備を備えた板金企業の存在がここ数年台頭してきており、従業員規模が50名〜100名のゾーンで企業数が目だって増えている。もちろん腕によりをかけて独自のコアコンピタンスを確立、この加工はこの企業という存在感をアピールして仕事を増やしている企業もあるにはあるが、総じて日本の板金業界でも3次元CADによる設計提案から板金、機械加工を経て、塗装、組立までを手がける企業に成長点が移動している。
 こうした傾向はエマージング(新興)市場でも目立っている。すでにASEAN、インドでは板金EMS企業を目指した動きが顕著になって業界の企業数は少ないものの、サポーティングインダストリーが整備されていないだけ、タンキーで板金製品を含む最終製品の組立までを手がけるメーカーが多い。しかもこうした企業は投資償却の年数を3年から2年という短期間で考え、思い切ってハイエンドな設備を導入して競争力を強化してきている。それだけに適地生産を目指す日系企業からはローカルサプライヤーでありながら、設備力を備えた※ストロングサプライヤーとして評価されるケースも増えている。
 変態点を迎えた日本経済の中で板金業界でも構造変化が着実に進み、グローバリゼーションがこれを加速するようになっている。すでに国内板金の製品生産高は2兆円を突破、金属製品加工業の中でも重要なサポーティングインダストリーに育っている。それだけに変化に対応できる企業力、経営力が求められている。