〜特集:「航空機業界の板金調達」〜

10年先も右肩上がりで拡大する航空機市場
今後も年率4.7%で世界の旅客需要は拡大する



波及効果の大きい航空機産業

世界の航空旅客予測
世界の航空旅客予測

 航空機産業は、先端技術や高度な素材・部品をシステムとして統合する高付加価値産業であり、他の産業に見られない特徴を有する産業である。まず、その高度で先進的な技術は他産業に広く波及する効果を持つ。例えば、我々の生活に身近なゴルフクラブ、テニスラケット等の複合材スポーツ用品にはじまりディスクブレーキ、カーナビゲーションシステム等の自動車関連部品、さらには新幹線の車体設計に適用された空力設計技術なども航空機の技術から転用されたものである。また、航空機の製造には数百万点もの部品を必要とし、中小企業を含め、広い裾野産業が関連産業として存在する。加えて、航空機は重要な防衛装備の一つであり、国の安全保障の基盤を形成するものでもある。かつては「零戦」に代表されるように世界最高水準の技術を有していた日本の航空機産業は、戦後のGHQの政策(航空機の製造・研究の禁止 ― 「空白の7年間」)により、欧米に大きく遅れをとることとなった。しかし、昭和27年に航空機製造が再開されて以降、欧米各社からのライセンス生産や国産機YS-11の開発・製造、1980年代に主流になってきた国際共同開発プロジェクトへの参画(米ボーイング社の767、777、787、5カ国共同開発のV2500エンジン、米GE社のCF34エンジン等)を通じて、わが国の航空機産業は着実にその規模を伸ばしてきた。
 財団法人日本航空機開発協会は今年3月に「民間輸送機の調査研究報告書」を発表した。それによると、2001年9月11日の米国同時多発テロの影響で減少した世界の航空旅客は、2003年に入ってもイラク戦争やSARSの影響で、特にアジアのエアーラインを中心に旅客が低下した。しかし、世界の航空旅客は2004年になって回復に向かい、2000年(テロの前年)を上回って、前年比で12%増、2006年も6%増と順調な伸びを示している。

次世代機の開発に力を入れるメーカー

ジェット旅客機の受注残-2006年末
ジェット旅客機の受注残-2006年末

 航空旅客の成長を支える世界経済は、テロの影響で2001年から2003年まで2%前後の低い伸びで推移していたが、2004年になって4.0%まで回復している。今後20年、世界の実質GDPの伸び率は、過去と同じ年平均3.1%を維持すると予測されている。旅客の伸びに影響を与えるのが航空運賃の低価格競争である。北米におけるSouthwestやJetBlue、欧州におけるRyanairやeasyJetのような低コストエアーラインは、...

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