〜特集:「舶用機器業界の板金調達」〜

造船技術に革命をもたらした
日本発の溶接ブロック工法


リベット打ち工法を変える

船台に運ばれたブロックの組み立てが進む
船台に運ばれたブロックの組み立てが進む

 大型船は現在、溶接ブロック建造法(ブロック工法)という方法で組み立てられている。前もって船体を適当な大きさに区分したブロックを工場で組み立て、それを船台まで運び、船体を組み立てる工法で、船台でいちから建造するより効率が良く、品質や作業性が高いため、造船業界で急速に普及した。従来の工法に比べ工数を大幅に削減し工期を短縮する上で大きな役割を果たした。
 溶接工法自体は、従来のリベット打ちに比べ、作業の効率化や鋼材使用量の削減といった大きなメリットがあった。しかし、溶接工法にも弱点があった。そのひとつが、下向きの作業と比べ上向きの作業では、効率が著しく劣る点だ。船台の上ですべてを組み立てる従来の方法では、船が大きくなれば、それだけ上に向かっての作業が増える。そうなれば高い足場を増やさざるをえず作業の準備にも時間がかかる。しかし、ブロック工法なら、この弱点を克服することができる。工場内で作業するため、ブロックの向きを必要に応じて変えることで下向きの溶接作業を増やすことができる。しかも、ほとんどの作業が屋根のある工場内で行われるため、天候による工期の遅れを最小限にすることができる。また船台がふさがっている状態でも、次に作られる船のためのブロックを組み立てておくことができるといったメリットもある。こうして早く、安く、しかも高性能の船を世界に送り出すことができるようになって日本の造船業は世界のトップシェアを確保してきた。

ブロック工法の加工手順
 溶接ブロック工法は鋼材を必要な大きさに切断する作業から始まる。高炉メーカーから船で運ばれた鋼材は最初にNC自動切断機(ガスまたはプラズマ)によって寸法通りに切断され、製品番号をマーキング後、コンピュータによって材料登録される。切断によって発生した端材も他の切断機で小さな部品に再利用され、鋼材1枚から切り出す製品は材料歩留まりを考えた板取を行うことで無駄なく使用されるようになっている。加工された切板はローラーで工場内を移動し、構造が簡単な平ブロックは機械やロボットで穴あけ加工され、自動溶接機によって組み立てられる。ところで、コンピュータ制御による自動溶接が主流になった現在でも、細部は人の手で溶接される。また自動溶接で不具合のあった箇所は人の手で修正を必要とされる。自動化が進んだ現在でも、溶接品質は作業者の経験と技量に委ねられているのが実情。造船で最も重要な技術が「溶接」と言われ、各造船所では溶接技術のスキル向上と自動化がモノづくりの重要な課題とされている。...

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