〜特集:「舶用機器業界の板金調達」〜

舶用機器は3、4年分の仕事量を抱え 増産設備投資を行う
船級協会による船舶の構造や設備のルール化が新規参入を拒む



新造船の発注が旺盛

VLCC(川崎造船)
VLCC(川崎造船)

 日本造船工業会の田負元会長(川崎重工業株式会社会長)は最近の記者会見で造船業界の受注動向について次のように述べている。「本年1〜7月の輸出船契約実績は、493万CGT(標準貨物船換算トン数)となり、前年同期を25%下回った。2006年は、IACS(アイアックス国際船級協会連合)の共通構造規則(CSR)や塗装性能基準の適用回避を目的とした駆込み発注により、契約実績が大幅に増加
した年であり、その反動から2007年は世界的に落ち着いた動きとなるというのが年初めの大方の見方だった。
しかし本年も世界的には、バルクの市況高騰が継続していること、世界経済のグローバル化によってコンテナ船などの発注が引き続き旺盛である。日本の造船所は3〜4年分の仕事量を確保している。また、先物船舶の契約については、資機材の値上がりによるコストアップの懸念、また市場や為替動向などの不確定要因があるため、造船所が選別受注に努めている傾向がある。また、昨今の
船価はどの船種船型とも高い水準にある。特に、鉄鋼原料輸送が拡大基調にあることから、鉄鉱石や石炭を運ぶケープサイズバルカーの需要が見込まれ、ケープサイズバルカーの船価が際立って上昇している。2003年頃から始まったバルカーの好況は、主として中国向け鉄鋼原材料輸送距離が伸びたことによるが、鉄鋼石や石炭の積み出し港で滞船が起きたことなどが、それに拍車をかけた原因だと思われる。船価は高い水準にあるが、資機材などの値上がりによるコストアップや、為替の動向を懸念している。一方、韓国造船工業会の発表によれば、韓国の受注量は2007年の1〜6月で1,132万CGTであり、前年同期比18%の増加。ロイド統計の1〜6月の受注状況では、日本が480万CGT(1,030万GT)、韓国が1,517万CGT(2,986万GT)、中国が1,296万CGT(2,646万GT)となっている。中国の1〜6月の建造量287万CGT(443万GT)から見て、際立って大きな受注量は、建設中や計画中の造船所の受注もカウントされているものと思われるが、いかに中国の設備の新増設計画が大きいか、その一端がうかがえる」。

能力増強投資が相次ぐ

世界の海上荷動量の推移
世界の海上荷動量の推移

 田負長の発言に見られるように、造船業界は2012年までの受注残を抱え各造船所ともフル操業を続けている中で能力増強を目的とした設備投資を活発化して受注消化に対応しようとしている。造船業界は1970年代後半以降、旧運輸省(現国土交通省)の主導で2度にわたり大規模な設備削減を実施。2003年まで生産能力を増やさない「総量規制」が適用されてきた。各社は生産能力を基本的に維持したまま、生産効率向上でここ数年の需要増に対応し、...

つづきは本誌2007年11月号でご購読下さい。