〜視点〜

系列的な取引を行う企業割合が上昇
グローバルな分業関係の構築も進む
.中小機械・金属工業の構造変化.

 商工中金が今年3 月に発表した「中小機械・金属工業の構造変化に関する実態調査」の概要を読んだ。全体でも28 頁。データも商工中金のHP(http://www.shokochukin.go.jp/material/pdf/special/cb07other03.pdf)からダウンロードできるので関心のある読者はぜひ一読されることをお勧めする。調査結果を見ることで、中小製造業界が置かれている環境と課題、それに対応する企業の対策の傾向を明確にすることができる。
 調査結果では「中小機械・金属工業」において、大企業を中心として形成された系列的な取引関係(いわゆる下請け系列的な取引)を行っている企業の比率が上昇するとともに、受注先が増加、地域的にも拡大していることから系列的取引関係は特定企業中心から多極化しつつある。高付加価値化や差別化を実現するため、精度向上などの技術力の高度化を重視している。一方、低コスト化対応として、海外からの調達など、グローバルな分業関係の構築が進みはじめている。将来的に中小機械・金属企業が指向するのは、複数の企業からの受注生産体制を中心に行う部品メーカーが最も多く、以下完成品メーカー、系列、地域、業種にとらわれない独立部品メーカーの順となっている。調査対象企業数は4,225社で有効回答企業数は2,181社(回答率51.6%)となった。回答企業が主に行っている生産工程(重複回答可能)をみると、最も多い工程が部品組立の46.7%、1,012社で以下、切削加工45.6%、988社、最終製品組立40.3%、875 社、溶接35.3%、770 社、表面処理.鍍金(メッキ)、塗装25.8%、560社、研磨25.3%、549 社、板金の17.1%、370 社、金型の17.%、368 社などとなっている。ここで意外と思うのが回答企業が行う工程の8 位に板金工程がランクされ、金型を若干上回っていることである。以前から小誌は板金業界のボリュームを金型業界とほぼ同じ規模と仮定してきたが、この調査結果でも同じようなトレンドとなっていることが証明された。資本金では1千万円から3 千万円という企業が35.8%を占めており5 千万円以下まででは75%が的を得ており、従業員数では99 名以下が78.2%を占めている。
 調査結果の趣旨は冒頭に紹介しているが過去の調査結果と比較して特筆するトレンドを挙げると以下のような項目が挙げられる。 下請系列的生産は行っていないとする「独立受注型企業」が前回の31.4%から24.6%に低下する反面、「系列受注型企業」が49.1%から57.1%へ増加した。しかも、売上堅調と回答した企業も「系列受注型企業」に多く、成長性の高い企業が多いことがわかった。
 受注単価の変化を5 年前と比較すると「厳しくなっている」が40.7%、「やや厳しくなっている」34.1%を含めると全体の3/4 が受注単価は依然として厳しい状況が続いていると考えている。受注単価以外の取引面では「品質精度向上」や「検品強化」が目立っている。
 納入先の製造の「国内回帰」の動きがあると認識する企業は12.0%で国内回帰に伴う技術面の変化としては「技術の高精度化・微細化」や「開発から量産までの期間の短期化」を挙げている。
 納入先の戦略では「生産拠点再編」「環境対応、ネット調達」など、「最適調達・生産が進展している」と認識する企業が多くなっている。また、外注方針をみると「外注先の絞込み」が43.9%と最も高く、ついで「グリーン調達基準の採用など環境問題への対応」を挙げる解答が38.1%と高くなっている。ネット調達に関しては「EDI 受注」が30.0%や、インターネットを通じた受注26.8%となっている。