〜INTERVIEW〜

せん断加工や深絞り加工技術同様に
曲げ加工技術の研究を盛んに

独立行政法人雇用・能力開発機構 職業能力開発総合大学校
精密機械システム工学科 小川 秀夫

 5 月25 日から名古屋大学で開催された平成19 年度( 第38 回) 日本塑性加工学会春季講演会では曲げ加工に関連する研究論文が10 数件も発表された。塑性加工学会では従来から、せん断加工や深絞り加工などに関する研究発表テーマが多いにもかかわらず、板金の曲げ加工に関する研究発表件数は少なかった。ところが、最近は企業からの研究発表も増えてきたこともあって少しずつ曲げ加工の研究が見直されている。そんな中で30 年以上前から薄板板金の曲げ加工を研究しているのが職業能力開発総合大学校精密機械システム工学科の小川秀夫教授。春季講演会では先生の研究論文「金属板材のスプリングバックレスV 曲げ加工」が論文賞を、「板金加工における高精度化に関する研究」が天田賞をそれぞれ受賞した。そこで曲げ加工の研究が注目を集めている現状に関して小川教授に話を聞いた。

厚板の曲げ加工研究も必要
 曲げ加工というと、これまでは薄板が中心に考えられがちでしたが最近は鍛造の代替加工法として厚板の曲げ加工が試みられる割合が増えてきています。しかし、厚板の曲げ加工に対する研究例は少なく、薄板と厚板の区別や厚板の定義を厳密に行うことが困難な状況です。私たちの研究室では2 年前から修士の学生を中心に厚板の曲げ加工を研究してきました。厚板の曲げ加工を研究していることを紹介すると、板厚はどのくらいですかという質問をよく受けます。しかし、板厚6 o といっても曲げ線長さが長ければ、曲げ幅と板厚との相対比からは厚板とはいえない場合があります。逆に2 oでも曲げ線長さが短ければ、薄板の曲げとは異なった配慮が必要です。私たちは板厚に対して曲げ線長さが短く、曲げ線方向の変形が無視できない場合や、板厚に対して曲げ半径が小さい場合(曲げ型寸法に対して板厚が大きい場合)を考え、曲げ加工限界板厚と厚板用曲げ型形状の検討を行いました。その結果、曲げ加工限界には大きく分けて4 つの限界があることを示しました。1 番目は幾何学的限界。曲げ変形部の幾何学的な関係により、パンチ先端やダイ肩部が幾何学的に加工板材に食い込んでしまって曲げ不可能になる場合があります。2 番目は ...

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