〜視点〜

団塊世代の再チャレンジでニッポン再生

 月号の視点を書く前に読者にお詫びしなければならない。2月号視点で紹介した「インテリジェンス 武器なき戦争」の引用個所に関して筆者はその前に読んでいたもう一冊の書籍「真珠湾の真実―ルーズベルトの欺瞞」(B・スティネット著 文芸春秋社刊)の内容を一部取り違えて引用、紹介してしまいました。2冊の書籍ともに「情報―諜報」の重要性と、表に現れた史実よりも裏側に秘められた事実を解き明かしている観点では同じ内容だったので誤って引用してしまいました。引用した内容が紹介した書籍には掲載されていないので疑問に思われた読者もおられたのではないかと思い改めて訂正させていただきます。冒頭に引用した真珠湾攻撃に関する引用は上記、文芸春秋社の書籍ですので興味ある方はそちらをお読み下さい。申し訳ありませんでした。
 ところで、紹介した「インテリジェンス 武器なき戦争」は私が買い求めた書店では1月のベストセラー第一位にランクされていました。視点がおもしろいということもありますが、これまで余り取り上げられなかった外交の舞台裏でのパワーゲームに興味を持った読者が多かったのだと思います。こんなところにもポピュリズムの欺瞞に飽きた国民の意識が反映されているのかもしれません。1月の宮城県知事選で東国原 英夫(ひがしこくばる ひでお)氏が当選したことに関してマスコミでは、既成政党の欺瞞に飽き飽きした有権者に再び政党離れ現象が起こっている−という分析を紹介。今年の参議院選挙を前にして有権者の意識に影響が出る−という議論を巻き起こしています。小泉政権を継承した安倍政権に対する支持率は40%近くに急落、不支持の数字とほぼ同じになってきました。政権誕生の頃から危うさは指摘されていましたが、回りに気を使いすぎて安倍首相のリーダーシップが目立っていません。「美しい国ニッポン」といわれてもピンとこない有権者が多いでしょう。中小製造業者からみると、「美しい国ニッポン」の繁栄を支えているのが中小製造業を中心とした基板技術や産業だという自負があります。しかし、小泉構造改革で格差問題が発生する中で大企業と中小企業間の格差も大きな問題となってきています。中小製造業が疲弊したのでは日本を支える基盤産業が崩壊してしまいます。モノづくりの復権をはじめとして抜本的な産業再編のビジョンを作り上げていく必要があると思います。むろんそこには安倍首相が強調する教育改革も含まれてきます。 過日、NHKスペシャルがインド・ムンバイにあるIIT(インド工科大学)を特集して、IT技術者をはじめ21世紀、世界のビジネスをリードする多くの逸材がIITの出身者であることを紹介するのを観て、今の政府や政治家が原点から日本の活力を生み出そうとしているのか疑問に思いました。あまつさえ年明け早々に報道された事件を見ても、日本の現状が大変なところにきているという印象はぬぐえません。
 団塊世代が大量にリタイアする中で、団塊世代が青春時代に全共闘運動で唱えた「解体」という言葉を思い起こします。当時のカリスマ思想家であった吉本隆明氏はその著作、「共同幻想論」の中で「社会のもたらす要請(社会存在たれ)と、人間の実存的契機とが確執する」ということを述べていました。そして全共闘運動はまさしくこの確執を打ち破る方法として「幻想の打破と主体性の確立」をめざし「解体」を唱えました。そんな時代が過ぎ去って、今は経済や技術が発展していくにも関わらず人間の主体がどこか行き場を失ってしまっているのかもしれません。ここはもう一度、団塊世代の青春時代に立ち戻ってニッポン再生のために、再チャレンジしていただく事が必要なのかもしれません。