Report ― VPSSを活用した板金ナレッジメント(上)

人に依存した知識を組織としてマネジメントする事が重要

株式会社 アマダ
実証加工部門 統括部長 山口 敦



1.なぜナレッジマネジメントなのか
 1-1 企業の競争力
図1 知のサイクル(SECIモデル) 企業には、同業他社との競争において主役となる商品、すなわち「製品・サービス」がある。その「製品・サービス」が市場において主導権を握っているか否かが、企業が生き残り、発展するための大きな要素となる。他社が容易にマネできない、圧倒的に優位な独自能力(※2コア・コンピタンス)を有し、競争力のある「製品・サービス」を生み出し続けることが、企業の中核的な能力として必要と思われる。
 コア・コンピタンスは、製品・サービスの背後に隠れて直接見えない場合が多いが、時代とともに変化し、やがて競合他社に並ばれ、業界の「必須の基本能力=あたりまえの技術」となる。自社と業界の未来を展望し、市場が要求する変化に対応して継続的にコア・コンピタンスを育てなければ、その企業は競争力を失う危険がある。そして、目先の利益を求め、リストラ・省力化・効率化に安易に走ることは、継続的なコア・コンピタンス育成が難しくなるということであり、競争力低下の要因の1つとなる。競合他社より優位に立つコア・コンピタンスを生み出す源泉は「人」であり、そこに宿る「知識(技能・技術・ノウハウ)」を、組織としていかにマネジメントするかが、経営の重要な課題と言える。

1-2 2007年問題
写真1 Dr.ABE_ASTROによる加工シミュレーション いわゆる団塊の世代が定年期を迎え、一斉に退職するために様々な問題が起こることが予想されている。「ものづくり白書」によれば、2007年以降に60歳を迎える1947〜49年生まれの団塊世代は約670万人に上る。中でもベテラン社員の熟練技能に頼る率の高い製造業では、技能・技術の伝承などに危機感を抱く企業の割合が30.5%と、全産業の平均22.4%より高い比率であることを指摘している。
 また、技能・技術の伝承には長い時間がかかるうえ、意欲ある若年・中堅層の確保が困難な状況にある。このため、各企業では、団塊世代の雇用を延長して指導者として活用するほか、中途採用を増やすというような対応をしているケースが多い−とも白書は指摘している。一方の若年層に対しては、企業のみの取り組みではなく、就業体験やフリーターの再教育など、官民が一体となって人材を育成する必要性を強調している。すべてにスピードが求められる現代においては、企業のみでの対応では限界があるだろう。 ...

つづきは本誌2007年3月号でご購読下さい。