鋼材業界のファイバーレーザ+棚システム最新活用事例
日本製鉄グループの厚板シャー事業再編 ― 建機向け部材の生産を三橋鋼材から移管
レーザ加工機5台分の仕事をLC-VALSTER-AJに集約
日鉄神鋼シャーリング 株式会社
日本製鉄グループの厚板シャー事業再編
日本製鉄グループの日鉄神鋼シャーリング㈱は7月1日、日鉄物産の100%子会社である三橋鋼材㈱の鋼板加工事業を承継し、新体制のスタートを切った。
この事業統合にともない、三橋鋼材の4工場・1倉庫(すべて大阪府門真市)を、日鉄神鋼シャーリングの「堺シーヤリング工場」(大阪府堺市)に集約。三橋鋼材が手がけてきた建設機械向け部材の生産も同工場に移管した。これにより「堺シーヤリング工場」の月間生産量約2,000トンに三橋鋼材の約500トンが上乗せされ、移管後の月間生産量は約2,500トンとなる。
統合に先立ち、「堺シーヤリング工場」では2024年3月にファイバーレーザマシンLC-VALSTER-6225AJ(10kW)のパレットチェンジャー仕様(8段)を導入し、三橋鋼材が得意としてきた板厚25㎜以下の小物の切断能力を増強した。また、三橋鋼材が保有していた2次加工設備を移設することで、切板加工の一貫生産体制を構築。拠点集約により横持ちのロスを解消し、「堺シーヤリング工場」1カ所でワンストップ対応が可能になった。
2024年夏には三橋鋼材が保有していた自走式ファイバーレーザ加工機(12kW)を改造・移設するほか、プラズマ加工機の電源更新による能力拡大、プライベートバースの荷揚げ能力の増強なども順次行っていく。
本田祐司社長は「今回の事業統合により最適な生産・稼働体制の構築をはかり、需要変動に備えたグループ経営基盤のいっそうの強化と、関西地区におけるサプライチェーン、顧客・市場対応力のさらなる充実を目指します。厚板の切断能力を拡大し、2次加工で対応できる範囲も広がったことで、当社と三橋鋼材の既存顧客のご要望に応えるとともに、両社のシナジーを創出することで、さらなる成長へつなげていきたい」と語っている。
関西地区における厚板加工・販売の主力拠点
日鉄神鋼シャーリングは、日本製鉄と神戸製鋼所の関西地区における厚板加工・販売の主力拠点。2013年に「㈱日鐵神鋼シャーリング」と「㈱シーヤリング工場」が合併し、2023年に統合発足後10周年をむかえた。
「シーヤリング工場」は1909年創業で、「日鐵神鋼シャーリング」は1914年創業。伝統ある両社の遺伝子を受け継ぐ同社は、長い歴史の中で培ってきた高度な技術とたしかな品質・納期で、得意先から厚い信頼を寄せられている。
同社は建材を中心に手がける「大阪工場」(大阪府大阪市)と建産機向け部材を中心に手がける「堺シーヤリング工場」の2拠点を持つ。三橋鋼材との統合前、切板の月間生産量は全社で約3,500トン、そのうち「堺シーヤリング工場」が約2,000トンだった。
「大阪工場」では、大型鋼製橋梁や超高層ビルなどに使用される主部材を鉄鋼メーカーから供給される厚板鋼板から切り出す。各種切断(1次加工)に加え、開先・面取り・穴あけなどの2次加工に強みを持っている。
「堺シーヤリング工場」は「熱処理部門」と「切板部門」で構成されている。
「熱処理部門」は、薄手高張力鋼や耐摩耗鋼を高品質で製造できる世界トップレベルの熱処理ラインを備える。製鉄所で圧延された厚鋼板を、400~900℃に再加熱・冷却(水冷・空冷)することで、鋼板の組織制御を行い、強度・硬さなどをコントロールする。このラインで製造された高張力鋼は建設機械・産業機械など幅広い用途に適用され、耐摩耗鋼はダンプトラックの荷台やブルドーザーの排土板などに用いられている。
「切板部門」は、建産機向け部材を4.5~250㎜の厚板鋼板から切り出す。プライベートバース(専用荷揚げ施設)を備え、公道走行時の制約に縛られることなく、鉄鋼メーカーが生産した長尺・幅広の鋼板を海上輸送で直接搬入できる。そのため同社が保有する自走式CO2レーザ加工機(4kW)の有効切断範囲は長さ34m・幅6.2m、プラズマ切断機は長さ18m・幅5.3mにもおよぶ。
会社情報
- 会社名
- 日鉄神鋼シャーリング 株式会社
- 代表取締役社長
- 本田 祐司
- 本社・大阪工場
- 大阪府大阪市此花区常吉2-6-37
- 堺シーヤリング工場
- 大阪府堺市西区築港新町3-36-1
- 電話
- 06-6462-1461(本社・代表)
- 設立
- 1938年
- 従業員数
- 148名(2024年7月時点)
- 主要事業
- 厚板鋼板の熱処理加工、厚板鋼板の切断加工および販売
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