花より一足早い酒宴 ― 日本の未来を大いに語る


春めいてきた今日この頃、教育関係者や経済ジャーナリスト、経済団体OB、企業経営者など異業種の方々とともに共通の知人である大学教授を囲み、年2回開催される飲みニケーションに参加した。

それぞれの専門的な立場から自身のトピックスや、旬の話題に独自の解説を披露したり、それにまた誰かが異論を唱えたりと、男性でありながら、かまびすしい事しきりであった。

 

話題となったのがIndustrie 4.0。

 

国内で稼働するNC工作機械を調べると、導入して10年以上経過したビンテージマシンが9割以上。

最近のNCマシンであれば、PCベースでマシンに仕込まれた様々なセンサから情報を吸い上げ、ログ情報からマシンの稼働状況をリアルタイムに把握するとともに、各種情報からマシンの予防保全を行えるような機能も備えている。

 

ところがビンテージマシンにはそんな機能は付いていない。

そうしたマシンのログ情報はどうやって吸い上げるのか。

 

ある経営者はこんなことを語っていた。

あるFAソフト開発会社が、簡単な通信機能を備えた機器をマシンに取り付け、ログ情報を吸い上げることを顧客に提案した。

当然、ログをとるために機器をマシンの制御系に接続しなければならない。

ところが顧客は、機器を接続することによって制御に不具合が発生したときの責任の所在を問うので、商談はそれ以上進まなかった ― 。

 

日本は早くからNC化に取り組み、工作機械のNC化率は台数ベースでも90%以上となっている。

その反面、NC工作機械でもビンテージマシンが多い。

 

中国に代表される新興国のNC化率はまだ半分にも満たないが、NC化は加速度的に進んでいる。

当然、導入されるNC装置は最新のものが使われ、ネットワーク対応も、Industrie 4.0に対応する現場情報の吸い上げも容易に行えるインフラが整っている。

日本はレガシーなNC装置とビンテージマシンだから、ログ情報を簡単に入手することができない。

 

そこで議論されたのが「デジタルIoT」ではなく「アナログIoT」。

たとえばレガシーなNCのディスプレイを常時監視するカメラを取り付け、画面や操作の手順を監視することで、今どんなことをマシンが行っているか、というステータス情報を画像データとして吸い上げ、ログデータに変換できる「アナログIoT」を開発したらどうか、といった話になった。

実現性はともかくビンテージマシンが多い日本が、これからIoTを活用したモノづくりを構築する際の課題解決策のひとつとして検討する価値はある。

 

また、別の議論ではEV化が加速すると自動車を構成する2万点以上といわれる部品が半分の1万点以下にまで減る可能性があるといわれている。

そうなれば工作機械需要にも大きな変化が生じる。

今のように主要な工作機械メーカーが80社以上も存在するという産業構造が変化して、メーカーの統廃合が加速する可能性を指摘する声も出ていた。

 

さらに、政府もロボット革命実現会議を発足させるなど、人工知能やロボットなどに技術開発の軸足を置くようになり、工作機械産業の発展にはどこまで力が入っているのか分からない、といった話も出た。

「マザーマシン」と呼ばれる工作機械産業をさらに発展させるためには、何をしなければいけないのか ― など熱い議論で盛り上がった。

 

今回参加した方々の大半は60歳を超えられ、中には80歳超えの現役ジャーナリストもいる。

そんな方々がお酒の勢いもあるのだろうが、日本の未来に関して熱い議論を戦わせる持論を持っておられる。

 

こんな世情ではあるが、それぞれの胸に一縷の光明が差し込んだ気がした。

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