日中製造業界の潮目の変化―「中国製造2025」を踏まえて【メルマガ連携】


 

2年ぶりに中国・北京で開催された「中国国際工作機械展覧会」(CIMT 2015)に出かけてきた。

 

すでに報道されているように、世界28カ国から1,554社の出展者が、北京国際展覧センターの8ホールに最新の加工機械やシステム、ロボットをはじめとした自動化システム、CAD/CAMなどを出展した。

6日間の会期中に会場を訪れた来場者総数は31万5,484人と前回を11.06%も上回った。

 

中国は、2002年から連続して世界一の工作機械の消費国であるとともに、2009年からは5年連続で世界一の生産大国になっている。

これは1978年の改革開放政策が始まって以来、中国に進出した外国資本が安い労働力を使って中国を「世界の工場」にしてきたことが大きな要因となっている。

 

しかし、市場経済の発展によって中国の労働コストは年を追うごとに高騰し、中国経済の発展によって為替水準が元高で推移している。

中国で製造するメリットは急速に薄れ、元高の影響もあって海外からの中国への投資が減少するようになった。

その結果、中国の経済成長は減速し、今年のGDP成長率も7%の予測に留まっている。

 

こうした中国経済の変化に対応して、習近平政権は昨年末にこれらの中国経済の目指すべき方向を「新常態」(New Normal)と表現し、以下の方針を発表した。

 

  1. 高速成長から中高速成長への転換
  2. 成長率重視型の粗放型成長モデルから成長の質・効率重視の集約型成長モデルへの転換
  3. 供給能力拡大重視型経済構造から供給能力適正化重視型経済構造への転換
  4. 伝統的経済発展推進力から新型経済発展推進力への転換

 しかし、いずれの内容も抽象的で、具体的な政策は今後を待たなければならない。

 

そんな中で、今回のCIMTで注目されたのが「新常態・新発展」というスローガンと、開催1カ月前の全人代で公表された「中国製造2025」(Made in China 2025)という10カ年計画だった。

 

開催日直前の4月19日には、中国机床工具工業会主催で「2015机床製造業CEO国際会議」が開催され、国内外の主要企業のCEOによる講演会やパネルディスカッションが行われた。

 

会議が行われた会場正面の演壇には「新常態・新発展」というスローガンが大きく掲げられ、中国を代表して講演した済南二机床集団有限公司の張董事長は45分の講演中、たびたびこうしたスローガンと「中国製造2025」で述べられている「量から質への転換」「生産大国から製造強国へ」という言葉を口にした。

 

また、展示会場でお目にかかった出展メーカーの首脳も異口同音に、このことを語っていた。

そして海外から技術やコアユニットを購入し、組み立て製造した機械を自社製品として販売する姿勢を改め、自主技術を産官学連携で開発し、2025年までには日米欧のコンペチターに負けない高機能・高品質な製品を開発すると語っていた。

 

新興国から先進国へ成長するための生みの苦しみといえばそれまでだが、中国の製造業が大きく変わろうとしているということを強く感じた。

それとともに、環境、工場内の安全衛生管理、品質管理、さらには知財に対する考え方を含め、価値観を大きく変えようとする強い意志を感じた。

 

日中関係は戦後70年を迎え、大きな節目を迎えている。

製造業界では今後、日中のパートナーシップが問われていくような気がする。

大きな潮目の変化を感じた。

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