マルチマテリアルの実用化と加工技術として期待されるレーザ加工


みなさんもご覧になったり、お聴きになられたりしているかもしれませんが、3月16日のNHKテレビ・ラジオのニュースで、マルチマテリアルの実用化に材料メーカーが取り組んでいる、という話題が紹介されていました。

 

マルチマテリアルとは、超高張力鋼板、アルミニウム、CFRPなどがそれぞれ持つ優れた特性を活かしつつ、併用する概念といわれています。

異なる金属や材料を接合し、併用することで材料特性を改善、高強度化や軽量化を実現する可能性を持つ素材のことです。

 

世界中でCO2排出規制が強化されている中で、自動車各社は燃費向上のために、様々な技術開発を実施しています。

その中でCFRP製ボディの実用化にいち早く成功したドイツ・BMWは、電気自動車(EV)を量産して市場投入するに際し、電気自動車こそ軽量化の効果が大きいと判断して、CFRP製のボディを採用した電気自動車の開発を決め、原糸から完成車に至るまでの製造システムを新規に構築しました。

 

この製造システム構築に際しては三菱レイヨンとドイツ・SGLの合弁会社が協力しました。CFRP製ボディを採用した「i3」は、従来車より約300kgの軽量化に成功し、電池搭載量も大幅に削減することができたといわれています。

このほかにもCFRP製ボディは、トヨタ自動車のレクサス、スバルのインプレッサWRXなどでも実用化されています。

 

しかし、軽量化を進める一方で衝突安全性向上の要求も高いため、軽量化と合わせて、高強度化との両立が強く求められています。

このような背景からCFRP製ボディをはじめ、より高強度な高張力鋼板の適用も急速に進んでいます。

 

しかしながら、高強度化が進むにつれ、成形上の課題(難加工性)も大きくなり、欧米を中心に高張力鋼板の成形加工には、ホットスタンプが実用化されています。

日本でもその導入が始まっています。

 

ホットスタンプとは、鋼板を約900℃に加熱、軟質化させた状態でプレス加工(スタンピング加工)を行い、同時に金型との接触に伴う冷却効果(接触冷却)により焼き入れを強化するという加工方法です。

マルチマテリアルも含めて、軽量化、高強度化に対応する材料はいずれも加工性が悪くなる一方で、接合も難しくなっています。

 

NHKニュースでは、三井化学が樹脂メーカーと共同で、金属の表面に直径10万分の1mm単位のごく小さなくぼみを作り、樹脂を流し込むようにして強く結合させる技術を開発したことが紹介されていました。

そしてこの技術を使って試作された車のハンドルなどを支える部品の場合、金属だけの従来製品に比べて2割程度の軽量化が実現できることから、メーカーでは3年後の実用化を目指している、と紹介されていました。

 

また、もう1社紹介された神戸製鋼所は去年、マルチマテリアルを開発する専門組織をつくり、溶接の温度や時間を調節して、鉄とアルミなどを結合させる技術の開発を進めており、自動車に採用されるための品質や安全性の検証を来月から始める計画で、来年中の実用化を目指している、などと紹介されていました。

映像では異種金属の接合をレーザ溶接で行ったと思われるサンプルを見せながら紹介されていました。

 

自動車ボディへの実用化が期待されるCFRPも、課題は加工技術。

そこで、切断、溶接へのレーザ加工技術の適応を期待する声が大きいといわれています。

 

マルチマテリアルは自動車のみならず、航空宇宙や医療機器など様々な分野で実用化への取り組みが行われており、今後は加工技術、加工システムの開発・実用化を含めて議論が拡大するものと思われます。

すでにホットスタンプ加工されたボディのトリム、カットには、3次元ファイバーレーザ加工が実用化されており、今後は固体レーザ技術を主体に実用化や応用技術の開発が進んでいくことが考えられています。

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