※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.6(2015年3月7日配信)からの転載になります。
板金業界では好調な受注が続いている。
特に2020年の東京オリンピック開催が決まったことで、明るさを取り戻している。
オリンピック開催の経済効果は30兆円(みずほ銀行)といわれているが、それ以上に、企業経営者のマインドに希望や勇気を与えた効果が大きい。
さらにアベノミクスによる景気の好循環を国民一人一人に感じてもらうことを目的に、地方創生のための公共投資が行われ、それとともに「ものづくり補助金」「生産性向上設備投資促進税制」「省エネルギー設備導入補助金」など、平成26年度補正予算で決まった景気対策の効果も大きい。
ところで、元気になった業界で顕著になっているのが業界の2極化。
好調企業とそれほどでもないという企業の企業間格差が際立ってきたことだ。
むろん後継者難などの影響もあるが、企業規模や経営者のマインドなど、人間力の差がこうした傾向を生み出している、と感じているのは私だけだろうか。
とりわけ今年になってお目にかかる企業経営者の人間的魅力に出会う機会が多い。
そうした経営者に共通しているのが「生かされている」という謙虚さだ。
中小企業の経営者ともなると、会社の懐と社長の懐を一緒に考える方々が多かった。
たしかに銀行借り入れに対する個人保証など、会社の命運がそのまま経営者の生活にも大きく影響する。
だからといって、私用で使う経費や自宅の備品まで会社経費で落とすのはいかがなものか。
そんな中、今年になってお目にかかった経営者の大半が公明正大な志をお持ちで、「会社は社員のもの」という考え方が徹底している。
利益が出れば決算賞与で社員への配分を厚くする傾向が強い。
さらにこれは従業員が50名以上の中堅企業に限られるが、会社に社員持株会を作って、経営者個人の株式を社員に売却、安定株主としている企業もある。
こうした企業の多くでは、第三セクターの中小企業投資育成株式会社から出資を受けることで、会社経営のディスクローズを徹底させている。
そして企業コンプライアンスにも積極的に取り組んでいる。
ある経営者は「後継社長が公私混同をするようであれば株主総会で社長罷免動議を出して採決しなさい、と持株会に指示をしており、安定株主である投資育成会社にも、社長罷免動議が出たら持株会に賛成するようお願いしています」とまで語っておられた。
こうした経営者はレアなケースかもしれないが、中小企業の経営者の意識が変化してきていることは事実だ。
そしてこうした企業の業績は、好調に推移する傾向があるようだ。
また、こうした経営者は社員を信じ、「お前たちに任せた」と仕事を任せる傾向も強い。
丸投げするのではなく、仕事を見守り、確信が得られたからこそ、そうした言動を行っている。
任せられた社員も成果を出すために一生懸命に取り組む好循環が生まれている。
「人」という字は互いに支え支えられている。
「信頼」は人を信じて頼るところで生まれる。
企業を取り巻く環境が改善している時だけに、「生かされている」ことの大切さを感じてほしい。