Interview

中小製造業のHUBとして「付加価値のバトンリレー」を目指す

製造業が疲弊すると日本経済は輝きを失う

株式会社 小川製作所 取締役 小川 真由 氏

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画像:中小製造業のHUBとして「付加価値のバトンリレー」を目指す小川真由氏

中小製造業界ではSNSを通じてさまざまな情報発信を行う経営者が増えている。中でも㈱小川製作所の事業承継者、小川真由取締役は、さまざまな統計データを駆使して中小製造業の実態を紹介するとともに、その状況から脱却するための対応策を自身の経験に基づいた知見から下記の記事で明快に指摘している。

◎小川製作所ブログ
 https://ogawa-tech.jp/blog/

◎ITmedia連載記事
 https://www.itmedia.co.jp/author/231905/

◎meviy連載記事
 https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/archives/category/blog/ogawa2/

小川取締役は1980年生まれの42歳。子どもの頃から航空宇宙に興味を持っており、宇宙工学者として著名な狼 嘉彰(よしあき)教授が慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の教授に就任したことを知り、同大学を受験。開設されたばかりのシステムデザイン工学科を専攻した。同大学大学院研究科の博士前期課程を修了した後は、富士重工業㈱(現・㈱SUBARU)航空宇宙カンパニーに入社。航空機の開発に携わり、3次元設計から試作機完成までのプロセスを経験した。しかし、実機が完成して、これから本格的な試験が始まるという矢先の2008年3月末に退社した。

家業の継承を前提に精密機械加工メーカーで4年ちかく、最先端の同時5軸制御マシニングセンタによる加工を含む切削加工品の製造技術、営業、品質保証の実務経験を積み、経営のノウハウを学んだ。

2012年に小川製作所に入社してからは、大企業と中小企業の両方の視点を生かしたものづくり業務を推進している。特に「規模の経済」を追わず、職人にしかできない技術・技能の価値を認めてもらうための営業活動、「付加価値のバトンリレー」を続けるための企業ネットワークによる連携を推進。さらに、3次元CADを活用した設計・シミュレーションによる開発支援業務などによって航空宇宙、医療機器、半導体製造装置、食品機械など、最先端の分野の仕事を手がけている。

また、小川取締役自身もバフ研磨など仕上げ職人としてのスキルアップに余念がない。最近は顧客からの受託加工のほか、蓄積してきた経験や技術を広く世の中に広めるために、Webメディアなどでの執筆活動や、ワークショップ、各地での講演を積極的に行っている。

これからの中小製造企業経営のあり方について、小川真由取締役に話を聞いた。

「航空宇宙の仕事に携わりたい」

― 大学院を卒業後、SUBARUと機械部品加工メーカーで勤務して、家業である小川製作所に入社されています。事業承継については常々考えていたのでしょうか。

小川真由取締役(以下、姓のみ) 当社は1953年に祖父の小川源次郎が創業。主に厨房器具、ガス炊飯器の製造を行うメーカーでした。しかし、その後、大手の厨房機器、食品機械メーカーが参入したことで、当社も事業の大幅な縮小を余儀なくされました。1967年に父の小川弘之(現・代表取締役)が入社し、1975年頃からは厨房機器以外に建築金物の仕事も受注するようになりました。祖父と父に社員が1~2名という零細企業でした。

それ以降は建築金物関連の仕事を続けてきましたが、2001年の米国同時多発テロ、2008年のリーマンショックにより大きな影響を受け、その後は父が一人でほそぼそと事業を支えていました。私は小さい頃から祖父や父が働く姿を見て育ち、中学の夏休みには仕事を手伝って小遣い稼ぎもしていました。周りからも「3代目」などと呼ばれ、「いつかは」と思っていました。

しかし、好きだった航空宇宙の仕事に携わりたいという気持ちと、大手企業の現実を知るためにSUBARUに就職しました。配属されたのが新しい航空機を開発する部門で、3次元CADを使った設計から、解析ソフトを使ったシミュレーション、そして試作機の製作や試験まで担当者の一人として参加しました。そしていよいよ本格的な試験を開始するという段階で事情もあって退社を決意しました。

SUBARUを辞めるときは妻の出産を控えていました。退社という決断には反対意見が多いだろうと覚悟していましたが、妻からはネガティブな話はいっさいなく私の背中を押してくれました。ただ私には中小製造業での実務経験がなかったので、江戸川区にある精密機械加工メーカーで、機械加工や実務経験、営業、財務、生産管理、品質保証などが勉強したい、とお願いしました。リーマンショックで受注量が落ち込んでいた時期でもあったため、現場担当というよりも営業担当として入社しました。そこでWebマーケティングなどを活用して新規顧客を開拓していきました。

SUBARU時代は3次元CAD/CAM/CAEを駆使してきたので、設計提案も積極的に行いました。その後は、品質検査、マシン操作も学びました。ここでの経験は貴重でした。そして、2012年に小川製作所に入社しました。父はとりわけTIG溶接の技術に長けていましたが、一人では思うようにはいきません。私は営業で仕事を集める一方、研磨を主体に仕上げの仕事を覚えながら少しずつWebマーケティングやSNSを活用して営業活動を展開していきました。

2015年には法人化して、㈱小川製作所となりました。経理は姉が手伝ってくれました。現在は家族社員を含めて社員数は7名です。

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会社情報

会社名
株式会社 小川製作所
代表取締役
小川 弘之
所在地
東京都葛飾区細田1-10-20
電話
03-3657-4196
設立
2015年(1953年創業)
従業員数
7名
主要事業
半導体製造装置、航空機、医療・理化学などの先端分野や産業用機械の部品製造、設計・開発・技術支援
URL
https://ogawa-tech.jp/

つづきは本誌2022年11月号でご購読下さい。

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