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ウィズコロナに対応したBCPの策定

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新型コロナの感染第6波が急速に広がっています。1日あたりの新規感染者数が10万人台に突入し、歯止めがかかりません。今回のオミクロン株は感染力が強く、都内では日々500人に1人の割合ペースで感染者が発生しているので、いつどこで誰が感染しても不思議ではありません。

これまでは比較的感染者が少なかった10歳未満の子どもたちにも感染が広がり、新規感染者に占める割合も2ケタ台になりました。保育園の休園や小中学校の学級閉鎖が相次ぎ、自宅待機する子どもの世話で会社を休まざるを得ない親御さんも増えています。

今のところ政府と経済界には、感染予防のために経済活動を停滞させるような対策を採る様子は見られません。オミクロン株の特性に合わせた「ウィズコロナ」のスタンスで、感染防止と経済活動の両立に徹しています。欧米ではすでに新型コロナをインフルエンザと同様に考え、中国が行う「ゼロコロナ」のような過激な対策を採る姿勢ではなくなっています。

インフルエンザといえば、平安時代からインフルエンザと思われる感染症の流行について記録があり、江戸時代には流行するたびに「お駒風邪」「谷風邪」「お七風邪」など時の有名人の名前がつけられたといいます。1729〜1730年に欧州で大流行したインフルエンザは鎖国下の日本でも流行し、1918年から1920年にかけて猛威を振るったスペイン風邪は世界中で6億人が感染し、4,000万人以上の死者を出したということです。私が子どもの頃にも流行し、頻繁に小中学校が学級閉鎖になりました。隣のクラスが学級閉鎖になると、自分のクラスも閉鎖にならないかと無邪気に期待していた記憶があります。

感染症を侮るべきではありませんが、今回の新型コロナの第6波では、3回目のワクチン接種や手洗いの徹底、三密防止を心がけることで日々の経済活動を粛々と進めていく「ウィズコロナ」の対応が求められていると思います。

板金業界の対応も冷静です。記名・検温・アルコール消毒を行えば、従来どおり対面での取材に応じていただけるお客さまが増えています。お客さまの工場の多くは繁忙な状態が続いており、先行きの不安感は改善されています。新型コロナよりも、原材料不足やサプライチェーンの混乱で部材調達が滞ることを心配されている方々の方が目立ちます。

ただ、一部では、感染者や濃厚接触者の増加で生産現場の人員確保ができるか、心配される向きもあります。現に、子どもが通う保育園の休園や小中学校の学級閉鎖により、女性のパート従業員が自宅にとどまらざるを得ず、人手不足に陥って納期遅延が発生しているケースも出ています。

社員が新型コロナに感染したり、濃厚接触者となったりして、入院や自宅待機を余儀なくされた場合、事業継続に支障をおよぼすことも想定されます。感染拡大が続く中でも、事業活動をしっかりと維持・継続するための取り組みの強化が不可欠です。

岸田文雄首相は今国会の施政方針演説で、事業者に対し、感染症に対応した「BCP(事業継続計画)計画遂行」を要請しました。BCPの策定は得意先、金融機関、従業員など、その事業者を取り巻くさまざまなステークホルダーにとって有意義であり、事業者自身の信頼性の向上にもつながります。

すでに大手企業の中には、地震や風水害などの自然災害を念頭に置いたBCPに感染対策を織り込むケースが増えています。テレワークはもとより、調達先を複数にしたり、非接触でものづくりができる無人化工場を検討したりしています。中小製造業でも感染対策を踏まえたBCPの検討を早急に行う必要があります。

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