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工場移転と設備増強で異分野の新規開拓にチャレンジ

「FLW-ENSISは企業の体質改善を象徴する設備」

株式会社 鈴木製作所

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画像:工場移転と設備増強で異分野の新規開拓にチャレンジ①パンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT+MP-2512C1。2015年の工場移転と同時に導入し、加工範囲拡大、新規開拓に貢献した/②2021年1月に導入したファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSIS。高速・高品位な接合を実現するほか、「企業の体質改善を象徴する設備」としても位置づけている

防衛関連機器で堅実成長 ― 強みはアルミの溶接・加工技術

画像:工場移転と設備増強で異分野の新規開拓にチャレンジ鈴木喜浩社長(左)と鈴木重雄会長(右)

㈱鈴木製作所は1980年、もともと板金加工企業で工場長を勤めていた鈴木重雄会長が独立・創業した。創業当初から防衛関連機器(無線・レーダー)の板金部品加工を中心に手がけ、堅実な成長を遂げてきた。特に創業以来30年以上にわたり培ってきたアルミの溶接・加工技術には特徴があり、得意先から高い評価を得ている。

2代目経営者の鈴木喜浩社長は、大手通信機器メーカーの金属プレス加工サプライヤーの金型部門で5年間勤め、1988年に22歳で鈴木製作所に入社。1995年に29歳で専務取締役に就任し、2005年に39歳で社長に就任した。

それ以降は、他社が敬遠しがちなアルミの溶接・加工にいっそう力を注ぎ、防衛関連機器の受注を拡大。取り扱う製品が増えていったことで業績は右肩上がりで伸び、ピーク時は前年比50%以上の増収を果たした。

2015年には約20年にわたって操業してきた横浜市鶴見区の工場から横浜市都筑区の現在地へ移転した。移転と同時にパンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT(マニプレーター付き)を導入し、その後もベンディングマシンHD-1303NT、ファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSISを順次導入。それと並行して非防衛分野 ― 民需関連の新規開拓に力を注ぎ、5年強で大手メーカーを含む35社以上の得意先を開拓した。

2020年8月には近隣の㈲武蔵工業(神奈川県横浜市)㈲穴沢製作所(同)とともに事業計画「連携体内のデータ共有・即納体制整備による医療機器市場への対応力強化」が経済産業省の「令和2年度ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」に採択され、共同受注にも乗り出した。

  • 画像:工場移転と設備増強で異分野の新規開拓にチャレンジ曲げ加工用CAM VPSS 3i BENDによる曲げ加工シミュレーション
  • 画像:工場移転と設備増強で異分野の新規開拓にチャレンジ曲げ工程。HD-1303NT(手前)はLC-C1NTとともに加工範囲拡大に貢献した

工場移転を決断 ― 異分野の新規開拓にチャレンジ

同社の創業の地は、川崎駅や第一京浜にほど近い川崎市内の八丁畷。1990年代なかばに横浜市鶴見区へ移転し、約20年間にわたって操業してきた。

その頃の得意先は3~4社で、いずれも無線・レーダーなどの防衛関連機器メーカーとその関係会社。取り扱う材料はアルミが大半を占めていた。工場が手狭だったこともあり、2000年以降に取り扱う製品が増えてからは、機械化できるブランク加工・曲げ加工は協力工場に委託し、社内では付加価値の高い溶接・組立・仕上げに特化。高い利益率を実現していた。

そんな同社にとって、2015年の工場移転は大きなチャレンジだった。

鈴木社長は「移転しなければ無借金のまま会社を終えることもできたでしょう。しかし、会社の持続的な発展を考えると、このままではいけないと考えました。気がかりだったのは、防衛関係だけを手がけていると、板金加工企業として“売上”も“スキル”も頭打ちということです」と語っている。

“売上”の面では、防衛関係の仕事はたしかに安定している。しかし、同社が取り扱う製品の受注量は横ばいか漸減傾向で推移しており、中長期的な伸びしろは見込めなかった。

“スキル”の面では、防衛関係の仕事は基本的に過去の実績を踏襲するため、「板金加工の技術がアップデートされない」と感じていた。民需の仕事であれば、溶接構造から複雑な曲げによる一体成形へとシフトし、品質・コストの両面で日々改善が進んでいる。サプライヤーからのVA/VE提案が求められ、優れた提案は受け入れられる。それに対して防衛関係は、特有の高度な品質要求や特殊工程はあるものの、難しい成形や多工程の曲げ加工などは必要なく、昔ながらの溶接構造が基本で、工法転換の提案もほとんど採用されることはなかった。

「板金加工企業として最低限、戦っていける体制をつくりたかった」と語る鈴木社長は、手狭だった工場からの移転と、板金加工設備 ― 協力会社に頼っていたブランク・曲げ工程の能力増強、そして民需の新規開拓を目指した。

  • 画像:工場移転と設備増強で異分野の新規開拓にチャレンジ溶接工程
  • 画像:工場移転と設備増強で異分野の新規開拓にチャレンジ同社が加工した製品の事例:基板取付カバー

会社情報

会社名
株式会社 鈴木製作所
代表取締役
鈴木 喜浩
所在地
神奈川県横浜市都筑区池辺町3288
電話
045-507-7831
設立
1986年(1980年創業)
従業員数
20名(技能実習生を含む)
主要事業
無線通信機器、食品機械、医療機器、電気機器などの精密板金加工
URL
http://www.suzuki-inc.jp/

つづきは本誌2021年7月号でご購読下さい。

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