特集

第33回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)

板金フェアに毎年応募 ― 技術・技能の研鑽と認知度向上が狙い

1枚板から製作した「桜球(さくらだま)」が「単体品の部」でグランプリを受賞

株式会社 ナダヨシ

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画像:板金フェアに毎年応募 ― 技術・技能の研鑽と認知度向上が狙い①「単体品の部」のグランプリを受賞した「桜球(さくらだま)」(SUS304・板厚1.0㎜、W550×D250×H450㎜)
/②「1枚板から複雑で美しい立体を製作するにはどうすれば良いか」という考えをもとに製作。一辺の長さが短いと干渉してしまうため、展開できるぎりぎりの寸法を見極めてプログラムしている

「素人発想、玄人実行の精神」

画像:板金フェアに毎年応募 ― 技術・技能の研鑽と認知度向上が狙い左から植木剛彦社長、溶接担当の望月健二さん、ブランク担当の髙須龍也さん

職業訓練法人アマダスクールが主催する「第33回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)で、㈱ナダヨシ「桜球(さくらだま)」が「単体品の部」のグランプリを受賞した。

同社は、「素人発想、玄人実行の精神と、たゆまぬ技術の向上をもって、人に喜びを与えるものづくりをし、地域社会に貢献します」を経営理念に掲げ、事業を展開。ステンレスの板金溶接加工を得意とし、3次元CADによる設計からバラシ、展開・プログラム、切断・穴あけ・曲げ、溶接・研磨・組立まで一貫で行う。トラックの艤装部品、手術室で使われる空気清浄機や医療設備、シンクなどの厨房機器、機械装置、神社のポールや賽銭箱・看板・手すりなどの特殊品を受注生産している。

約300社の得意先を持ち、そのうち主要得意先は60社ほど。新規品70%、リピート品30%の比率で、月間の受注アイテム数は2,000件以上となっている。

社員の技術・技能の研鑽を目的に参加

板金フェアには第18回(2005年度)以来、社員の技術・技能の研鑽と会社の認知度向上のため、毎年参加するようになった。

近年、同社の年賀はがきには社員の集合写真と、応募作品の写真を掲載している。また、第2工場にはギャラリーを併設し、板金フェアでの受賞作品を展示するなど、同社にとって板金フェアは重要なイベントになっている。

第22回(2009年度)の板金フェアで「宝箱(樹脂成形金型1/2サンプル)」が「溶接を主体とする組立品の部」の金賞と「中央職業能力開発協会会長賞」をダブル受賞。第25回(2012年度)では、「幼稚園用手洗いシンク(1/3ミニチュア)」が「高度溶接品の部」の金賞を受賞した。

第27回(2014年度)は「単体品の部」「組立品の部」「高度溶接品の部」「造形品の部」の4部門に応募し、「単体品の部」の「240面体」が「厚生労働大臣賞」を受賞。第30回(2017年度)では「ステンレス薔薇花束」が「造形品の部」の金賞を受賞。第31回(2018年度)では「保育園用デザインシンク」で2度目となる「厚生労働大臣賞」を受賞した。

  • 画像:板金フェアに毎年応募 ― 技術・技能の研鑽と認知度向上が狙い「桜球」の展開図。同じ色の花びらを組み合わせて溶接すると立体的な桜の花になるように色分けされている
  • 画像:板金フェアに毎年応募 ― 技術・技能の研鑽と認知度向上が狙い1枚板から切り出した「桜球」のブランク材

「厚生労働大臣賞」受賞作品をさらに発展

今回「単体品の部」のグランプリを受賞した「桜球(さくらだま)」(以下、桜球)について、植木剛彦社長は次のように語っている。

「作品募集が始まる前から、第27回で『厚生労働大臣賞』を受賞した『240面体』の新しいバージョンとして、桜の花びらをかたどった立体形状をあえて1枚の板から製作してみたいと考えていました」。

「3次元CADによるモデリングと展開は私が担当しました。3次元モデルでは問題なくできても、展開すると干渉してしまう場合があります。この作品では大きさを決める際に一辺の長さが短いと干渉することがわかり、展開できるぎりぎりの長さを見極めました。展開が1枚板におさまるように何度も設計変更を行い、約20時間を設計に費やしました。せっかくなので見栄えがするように回転させたいと思い、バランスを考えて製作しました」。

「曲げ加工では、材料がベンディングマシンの加工範囲内に入らないので、スリットを入れて手曲げで加工しました。しかし、角度によって伸びがちがうため、なかなか計算どおりにはいきませんでした」。

「本番ではSUS304の700番研磨材の板厚1.0㎜を使用しましたが、テスト加工では400番研磨材を使いました。いずれにしても両面研磨の材料なので、レーザ加工の際は、裏面にスパッタ防止剤を塗って裏抜きをし、表面がきれいになるように、溶接箇所もわからないように仕上げました」。

「溶接では、少しでも寸法がズレると次の溶接点が合わなくなり、最終的なカタチにならなくなります。1カ所ずつ角度を確かめながら溶接するために専用の角度ゲージをつくり、固定する者と溶接する者の2名で確認しながら作業を進めました。一度溶接してしまうと微調整がきかなくなるため、溶接精度が求められました」。

  • 画像:板金フェアに毎年応募 ― 技術・技能の研鑽と認知度向上が狙い「桜球」の3次元モデル
  • 画像:板金フェアに毎年応募 ― 技術・技能の研鑽と認知度向上が狙い「桜球」の加工をしたパンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT

会社情報

会社名
株式会社 ナダヨシ
代表取締役
植木 剛彦
所在地
福岡県古賀市青柳194
電話
092-944-4755
設立
1981年
従業員数
20名
主要事業
ステンレス・アルミ・スチール・チタンなどの精密板金・溶接・加工一式/厨房機器・医療機器・自動車パーツ・装飾品金物・その他
URL
https://www.nadayoshi.co.jp/

つづきは本誌2021年6月号でご購読下さい。

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