特集

第33回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)

“溶接女子”のチャレンジ ― 家族の応援、支えがあってこそ

実物大の1.5倍で再現した「メタルダイオウグソクムシ」が「造形品の部」でグランプリを受賞

株式会社 スズヒロ製作

LINEで送る
Pocket

画像:“溶接女子”のチャレンジ ― 家族の応援、支えがあってこそ「造形品の部」でグランプリを受賞した「メタルダイオウグソクムシ」(SUS304・板厚1.5㎜・2.0㎜・3.0㎜、W600×D450×H250㎜)

「造形品の部」でグランプリを受賞

画像:“溶接女子”のチャレンジ ― 家族の応援、支えがあってこそ左から鈑金事業部の須藤充工場長、鈴木浩会長、鈑金事業部溶接課の内山麻由さん、前田純子社長、鈑金事業部の谷川博美部長

「第33回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)で㈱スズヒロ製作「メタルダイオウグソクムシ」が「造形品の部」のグランプリを受賞した。

「メタルダイオウグソクムシ」は昨年4月、鈑金事業部溶接課の内山麻由さんが浜松市の鉄オブジェの展示会「溶接女子の美術館 はままつFe Alice(フェアリス)」に出展するために製作した。この展示会は、2014年にできた浜松市内の鉄の造形作家の団体「はままつ Art・鉄・人(アーテツト)」が、地元の芸術大学や金属加工工場、工房などで溶接に携わる女性や、趣味などで鉄・溶接に興味を持つ女性(以下、溶接女子)の作品公開の場として企画した。開催される予定だった展示会が、コロナ禍で中止になり、内山さんの作品は急きょ、板金フェアに応募することが決まった。

溶接に憧れ、この業界に飛び込む

2017年10月に入社した内山さんは2児の母親。もともとものづくりや溶接に興味を持っていたが、結婚・出産・育児を経験し、その思いは次第に強くなっていった。自宅を新築した際に、表札の製作を依頼した女性工芸家と出会い、溶接を駆使して作品を製作する様子を見て、溶接への興味はますます強くなった。

そんなときにスズヒロ製作の「溶接工募集!」という求人広告が目に入った。すぐに会社訪問し、「OJTで一貫して指導する」と聞いて、その場で入社の意思を伝えた。

内山さんは入社後、静岡県シートメタル工業会が主催する講習会に参加し、アマダスクールの講師から溶接について学んだ。講習会で溶接のイロハから金属材料の知識までを学び、溶接の実務は先輩社員から学んでいった。

溶接条件はその時々によって変わるため、備忘録に記録して、同じ失敗を繰り返さないようにはげんだ。半自動溶接からTIG溶接まで、さまざまな溶接工法を学んでいった。

徐々に仕事を覚え、半自動溶接では上向き、下向きなどの溶接箇所に応じて施工の姿勢を変えることにも慣れていった。上向き溶接の場合は、溶接中に顔面にスパッタが降ってくるが、溶接面を被り手袋をして完全防備で臨んだ。

そしていつしか、内山さんは盤筐体の溶接・組立作業をひとりでこなせるまでに成長し、鈑金事業部の須藤充工場長に「覚えが早く、今では頼りになる作業者になりました」と評価されるまでになった。

画像:“溶接女子”のチャレンジ ― 家族の応援、支えがあってこそ左:ボール紙で製作した「メタルダイオウグソクムシ」の型紙/右:「メタルダイオウグソクムシ」の胴体部のブランク材

“溶接女子”の作品を集めた美術展「はままつFe Alice」

2020年初頭、前田純子社長は内山さんに「はままつFe Alice」への出展を打診した。

「階段手すりなどを製作するナイトー工業㈱の内藤照幸社長は、『はままつ Art ・鉄・人』の代表を務めています。内藤社長から“溶接女子”の作品を集めた美術展の開催することを聞き、内山さんに出展を勧めました」と前田社長は語る。

内山さんは「社長からすすめられたというのもありますが、自宅の表札をお願いした女性工芸家がメンバーにいたことと、静岡文化芸術大学の学生や私のように工場で溶接作業に関わっている“溶接女子”が、どんな作品を製作するのか興味があり、挑戦を決めました」と当時の心境を語る。

作品のモチーフは、子どもたちの間で人気があるダイオウグソクムシにした。モチーフを決めたきっかけについて内山さんは「子どもたちから『直接見ることができない生き物をつくって!』とリクエストを受けました。『固い』『冷たい』といった金属のイメージからはかけ離れた柔らかいフォルムで、曲線が美しく、かわいらしさも感じました」という。

ところが、2020年4月に開催予定だった展示会はコロナ禍により中止になった。そんなときに、アマダの営業担当者から板金フェアへの応募をすすめられた。

「それまで板金フェアに応募した経験はありませんでしたが、過去の受賞作品を見てみると、それぞれ特徴があり、精巧に仕上がっていました。ここに内山さんの作品を応募することを須藤工場長や谷川鈑金事業部長に相談し、合意が取れたので内山さんにそのことを伝え、出展することが決定しました」(前田社長)。

画像:“溶接女子”のチャレンジ ― 家族の応援、支えがあってこそ左:「メタルダイオウグソクムシ」の加工済みの胴体部を抱える内山さん/右:外殻部分の複合Rを忠実に再現しており、足先などの表現もリアルで全体として躍動感のある作品に仕上がった

会社情報

会社名
株式会社 スズヒロ製作
代表取締役会長
鈴木 浩
代表取締役社長
前田 純子
所在地
静岡県浜松市北区都田町9576
電話
053-428-8181
設立
1988年
従業員数
50名
主要製品
配電盤、制御盤、機械カバー、架台、安全柵、産業用機械カバー、一般塗装
URL
http://www.suzuhiro-ss.co.jp/

つづきは本誌2021年6月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

特集記事一覧はこちらから