特集

第33回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その1)

こだわり抜いたスムーズな動き ― 「多工程のミックス」で実現

「クラシックカメラ」が「日刊工業新聞社賞」を受賞

飯島プレス 有限会社

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画像:こだわり抜いたスムーズな動き ― 「多工程のミックス」で実現①「日刊工業新聞社賞」を受賞した「クラシックカメラ」(SUS304・板厚0.5~6.0㎜、W150×D150×H140㎜)/②レンズを収納した状態。カメラ上部のスイッチを押すことで前面カバーが開き、レンズのカバーを手前に引っ張ると蛇腹構造のレンズが飛び出てくる

社内の各工程を高い水準でミックス

画像:こだわり抜いたスムーズな動き ― 「多工程のミックス」で実現左から飯島弘一郎専務、製造2課・小貫祐一係長、飯島浩一社長、製造3課・飛田康典係長

「第33回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「造形品の部」に出品した飯島プレス㈲「クラシックカメラ」が「技術水準・独創性がきわめて高く、業界の発展に貢献すると思われる作品」に贈られる「日刊工業新聞社賞」を受賞した。

この作品は、約2年をかけて完成させた力作。レーザ加工から曲げ加工・TIG溶接・塗装・研磨・組立まで、同社の特徴である多くの工程を高い水準でミックスし、社内一貫生産により完成させた。特にレンズ収納部は、実物の機構を忠実に再現した構造となっており、細部の仕上げまでこだわり抜いて製作されている。

カメラ上部のスイッチを押すことで前面カバーが開き、レンズのカバーを手前に引っ張ると蛇腹構造のレンズが飛び出てくる。スムーズな開閉の動きを再現するために工夫を凝らし、蛇腹の長さや曲げの角度、溶接位置など、さまざまな条件を細かく調整している。

レーザ加工の特性を生かし、積層構造を巧みに駆使することでソリッド形状を表現している。カメラ上部の複雑形状は、板厚ちがいのステンレス材を積層して、手磨きによるバフ研磨を行い、切削加工と見まがうクオリティーに仕上げた。ダイヤル部やレンズ先端部の細かな凹凸は、外周をレーザ加工でギザ歯状に加工し、それをずらしながら積層することで、実物のローレット加工にちかい質感を出している。

さらに、カバー部分などは社内の塗装工程により黒のレザートーンで仕上げ、質感を向上させている。

  • 画像:こだわり抜いたスムーズな動き ― 「多工程のミックス」で実現伸ばした状態の蛇腹
  • 画像:こだわり抜いたスムーズな動き ― 「多工程のミックス」で実現カメラ上部は板厚ちがいのステンレス材を積層して手磨きを行い、切削加工と見まがうクオリティーに仕上げた

時代の変遷とともに事業領域を拡大

飯島プレスは1958年、東京都墨田区で金属プレス加工企業として創業した。1973年に水戸市内へ移転し、1978年頃から精密板金加工へと徐々にシフト。その後は飯島浩一社長の指揮のもと、精密板金加工を中核に据えつつ、時代の変遷とともに事業領域を拡大させていった。

大手通信機器メーカーの一次協力工場として、通信機器関連の精密板金加工を中心に手がけてきたが、2000年頃から新規得意先の開拓を本格化。現在の得意先業種は、通信機器、鉄道車両(床下機器)、半導体検査装置、医療機器、分析機器、厨房機器、昇降機など多岐にわたり、それぞれの売上構成比は10~20%とバランス良く分散している。

2008年には塗装設備を導入、2017年頃からは一部で電装品を含むアセンブリーまで手がけるようになり、設計・プログラム・抜き・曲げ・溶接・塗装・シルク印刷・組立にワンストップで対応する社内一貫生産体制を構築した。さらに近年は、中厚板の加工に対応するための設備投資を活発化させ、精密製缶の分野にも力を入れている。

2012年には、県内の製缶板金企業・機械加工企業と3社でベトナム・ハノイへ工場進出した。主力得意先についていくパターンではなく、現地の日系企業を中心に新たな得意先を開拓。日本国内と同様、付加価値が高い多品種少量生産や精密製缶の仕事を強みとすることで、2018年以降は黒字化を果たしている。

  • 画像:こだわり抜いたスムーズな動き ― 「多工程のミックス」で実現新工場棟に設置されたベンディングマシンEG-6013(手前)とHG-1703(奥)
  • 画像:こだわり抜いたスムーズな動き ― 「多工程のミックス」で実現2008年から内製化した塗装工程。設計から塗装・シルク印刷・組立まで対応する社内一貫生産体制が同社の強み

会社情報

会社名
飯島プレス 有限会社
代表取締役社長
飯島 浩一
所在地
茨城県水戸市住吉町297-1
電話
029-247-6221
設立
1958年
従業員数
49名(パート社員含む)
主要事業
精密板金加工・精密製缶・塗装・組立配線(通信機器・電気機器用筺体製造、昇降機・エスカレーター部品製造、医療機器・分析器部品および筺体製造、半導体検査装置・厨房機器関連など)
URL
http://www.mito-iijima.co.jp/

つづきは本誌2021年5月号でご購読下さい。

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