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5G投資が本格化、板金需要の回復に期待

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5Gの商用サービスが2020年春から順次スタートしました。NTTドコモをはじめとする国内通信事業者4社は、2024年度までに総額1兆6,000億円を投資し、基地局などの整備計画を進めています。

新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが普及し、通信トラフィックが増大しています。政府は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として5G導入促進税制を導入、5G基地局の整備前倒しとローカル5Gへの投資について取得価額の15%の税額控除または30%の特別償却ができる措置を発表しました。さらに通信需要の急増を受け、全自治体を対象に第2次補正予算で光ファイバー回線網整備に500億円を投じる措置を盛り込みました。

総務省は2023年度末までに、5G基地局は開設計画の3倍となる21万局以上の展開を目標としています。これによって高速・大容量の通信ができる情報基盤整備が加速し、産業のあり方も大きく変わることが期待されています。

板金業界では2019年後半から、5Gの商用サービス開始にともなう新たな板金需要に期待するムードが高まっています。

電波を割り当てる総務省は、割り当てに際し、全国を10㎞四方のメッシュに区切り、都市部・地方を問わず事業可能性のあるエリアを全国で4万5,000カ所定め、広範にカバーする計画を立てていました。2018年末には、5年以内に、その50%以上に基地局を整備するとしていました。それに対してドコモは97%、KDDIは93.2%、ソフトバンクは64%、楽天モバイルは56.1%をカバーする計画を発表しました。

5Gのデータ通信には、準ミリ波(20G~30GHz)だけでなくミリ波(30GHz以上)も活用することになっています。ミリ波は数百MHz幅という広い帯域を活用でき、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という5Gの要件を満たすことができます。

しかし、従来のマイクロ波と比較して、ミリ波は近傍製品の影響を受けやすく、アンテナ設置場所の自由度が低いという問題があります。また、ミリ波は電波の直進性が強く障害物に弱いうえ、屋外でも1,000フィート(約304m)足らずしか電波が届きません。

そのため、従来と同等以上の通信環境を確保するには、メッシュ内にアンテナを張りめぐらせる必要があります。ビル壁面や街路灯、電柱などさまざまな場所にアンテナを設置することになり、そのためには設置場所に応じたさまざまな取付金具などの板金需要が生まれてくると期待されます。

ここへきて、業界では9月以降に本格的な基地局投資が始まるとの期待が高まっています。これは、5G基地局やローカル5Gの導入促進のための税制優遇措置や、光ファイバーの整備を目的として行う「高度無線環境整備推進事業」を踏まえ、通信4社が8月末までに基地局整備に関する新たな設置計画を公表することになっており、それによって一気に基地局投資が進むと期待されるためです。

NTTドコモなどに中継器やラックを納入している板金企業は、ネットワーク基幹のハブ局に設置する大型ラックの耐震試験を終え、量産に入る段階です。ハブ局以外の基地局に設置する小型のラックも現在、耐震試験中で、「下期以降は前年比2倍以上の発注量が見込める」と話していました。ほかの通信事業者から受注している板金企業も、8~9月から生産が始まるとしています。

2020年度下期からは5G投資が本格化する気配になっています。これを契機に板金業界の業績回復が本格化することを願います。

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