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「2019年度天田財団助成式典」招待講演

金属3Dプリンタによる高機能金型やインプラント製品の成形技術

鳥取大学 大学院工学研究科 機械宇宙工学専攻 陳中春 教授

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複雑な熱処理影響を受ける3D造形

画像:金属3Dプリンタによる高機能金型やインプラント製品の成形技術鳥取大学大学院工学研究科・陳中春教授

本研究では金属3Dプリンタを用い、マルエージング鋼の緻密な金型の造形、チタン合金の多孔質な人工股関節インプラントの造形を行った。また、積層造形で加工した多孔質体と緻密体との拡散接合、積層造形による多孔質部と緻密体の一体造形を行った。

3D造形は、非常に複雑な熱影響をともなう。原料である金属粉末はその融点を超えて用いられ、造形した上にさらに粉末を敷いて造形する際は、その下層にも熱影響を与えている。また造形後も、溶体化処理や時効処理といった熱処理を行うため、熱の影響を受け続けている。

最終的に求める機械的性質・機能性を実現するためには、形状だけでなく、材質の制御が重要になる。特に加工の各パラメーターの影響を理解することが重要だ。

マルエージング鋼金型の造形

マルエージング鋼の3D造形に使う原料は、粒径20~45μmの球形粉末。造形パラメーターとしては、レーザパワー、走査速度、ピッチ、スポット径などがある。

本研究では造形パラメーターの影響を表すプロセスマップを作成し、最適造形範囲を導き出した。特にレーザパワー300W、走査速度700㎜/sec、ピッチ0.12㎜、スポット径0.2㎜、エネルギー密度71.43J/㎜3、オーバーラップ率40%の条件で造形したマルエージング鋼が最も高い相対密度(99.8%)を示し、表面粗さも比較的低い値を示した。

レーザパワーが小さすぎても大きすぎても密度は低くなる。スポット径とピッチの影響を反映したオーバーラップ率の変化によっても造形試料の相対密度は変化する。オーバーラップ率が高くなり、より多くのエネルギーが与えられると、温度が高くなり、かえって密度が低くなる。金属の飛散(スパッタ)やボーリング現象などの異常溶融が生じるためだ。

エネルギー密度が低いと一部溶解していない粉末も存在し、相対密度は低くなる。エネルギー密度が高くても、多くの球状空孔が形成され、相対密度も比較的低い値を示す。

つづきは本誌2020年3月号でご購読下さい。

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