Interview

ミスミが提案する部品調達のデジタル革命

部品調達プラットフォーム「meviy」を展開

株式会社 ミスミ 3D2M企業体 代表執行役員企業体社長 吉田 光伸 氏

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画像:ミスミが提案する部品調達のデジタル革命吉田光伸氏

FAメカニカル部品・金型部品の製造・販売などを手がける㈱ミスミグループ本社(以下、ミスミ)は、Web上で3次元CADデータをアップロードするだけで即時見積りと最短1日出荷を可能にした次世代部品調達プラットフォーム「meviy」(メヴィー)を展開している。

同社は1977年にプレス金型用標準部品カタログを創刊して以降、カタログ番号で注文を受けて受注製作する「MTO」(Make To Order)のビジネスモデルを展開。“標準化”をキーワードにFA製造装置用部品などをラインナップに加えながら独自の発展を遂げてきた。

2000年代以降は紙のカタログをデジタル化。2010年からは、他社ブランド商品も同社のECサイトから一括で購入できる「VONA(Variation & One-stop by New Alliance)事業」をスタートし、取り扱いメーカー数は3,000社以上、商品点数は2,740万点にのぼる。

今では世界中に営業拠点64カ所、配送センター17カ所、生産拠点23カ所を持ち、顧客数はグローバルで30万社を超え、「モノづくりの社会インフラ」とも呼べるサプライチェーンをグローバルで確立。2018年度の売上高は2001年度比で約6倍の3,319億円に達した。

さらに「meviy」の登場によって、ミスミは従来の主力ビジネス ― カタログから注文する「規格品」の製造・販売に加え、図面から製作する「図面品」にも対応できることになった。meviyを推進するミスミの社内カンパニー「3D2M企業体」の吉田光伸企業体社長にmeviyの現状や今後の展望について聞いた。

「カタログ」による部品調達イノベーション

― meviyの開発に至った経緯を教えてください。

吉田光伸3D2M企業体社長(以下、姓のみ) まず当社には「ものづくりの、明日を支える。」という全社ミッションがあります。お客さまのモノづくりの現場でわれわれの製品が至るところで活用され、「電気・ガス・水道・ミスミ」のように「モノづくりの社会インフラ」として“存在するのは当たり前だが、なくては困る”という姿を目指しています。そして「インフラ」の役割を担うからには、製造業自体をより進化させていくのが当社の責任と考えています。

また、最も重要なものとして掲げているのは「時間戦略」です。これまで当社が展開してきたサービスと同様、meviyもお客さまの納期やスピード、ひいてはモノづくり全体のスピードを速くしていくことを目指して開発しています。

― 御社のこれまでの取り組みとあわせて、「時間戦略」の中身についてもう少し詳しく聞かせてください。

吉田 一貫して取り組んできた課題は、一言で言うと「部品調達にかかる時間の短縮」です。

たとえば、1,500点くらいの部品で構成される工場設備をつくろうとしたとき、かつては部品と同じ数の図面が必要でした。そこには「作図の手間」「見積りの待ち時間」「長い納期」という「時間の3重苦」がありました。

この「3重苦」の解消を目指して、当社は1977年に「カタログ」を発刊し、「標準化」を推進することによってイノベーションを起こしました。

「カタログ」が生み出した価値は、「作図」と「見積り」が不要になること。カタログから形状・材質・表面処理・寸法などの仕様を選択することで、図面がなくてもカタログ番号で注文できるようになりました。また、当時は価格も納期もブラックボックスで、見積りを取らないとわかりませんでしたが、ミスミのカタログには価格も納期も明記しました。

「標準化」が生み出した価値は、「確実短納期」と「低コスト」の実現です。ベトナムにある当社の工場で半製品までつくり、消費地にある最終仕上げ工場へ船便で輸送します。注文が入ると、半製品の状態から最終仕上げ加工を行って出荷します。半製品は大量生産によるスケールメリットを生かし、最終仕上げは時間勝負の1個流し生産を行うことにより、「短納期」と「低コスト」を両立しました。

画像:ミスミが提案する部品調達のデジタル革命meviyによる部品調達フローのイメージ

カタログの限界 ― 「図面品領域」が課題

― meviyは、「カタログ」に継ぐ“第2のイノベーション”という位置づけになるのでしょうか。

吉田 われわれはmeviyを「リ・イノベーション」として、ミスミの“次の10年”をつくるサービスと位置づけています。

お客さまのBOM(部品表)を分析してみると、おおよそ半分が「規格品領域」で、ミスミのカタログから注文できるようになりました。しかし、残り半分の「図面品領域」は、これまでと同様に図面を作成して調達しています。このリードタイムの差が、モノづくり全体のスピードを阻害しています。「規格品」だけ早く届いても、部品がすべてそろわなければ組立はできません。

当社は長年、部品の標準化に取り組んできましたが、限界があります。曲面を含む3次元形状をカタログに表現するのは困難ですし、カタログ番号が何十ケタにもなるようではお客さまが注文できません。特に板金部品や切削部品は複雑な加工を求められることが多く、標準化は困難でした。

ミスミが提案する部品調達の「DX」

― meviyは、従来の「カタログ」ではカバーできなかった「図面品領域」に対応するサービスということですね。

吉田 3次元CADの普及が進み、AI技術やデジタルマニュファクチャリングが加速度的に進化している今、製造業は「DX」(デジタルトランスフォーメーション)により新たな競争優位性を生み出すことが必要です。

meviyは、ミスミが提案する部品調達のDXの姿です。部品の3次元CADデータをアップロードすることで、即時見積りと最短1日出荷を実現します。

現時点で対応する設計シーンとアイテムは、設備・装置設計の「FAメカニカル部品」(板金部品・切削プレート)、開発・製品設計の「ラピッドプロトタイピング」(試作)、金型設計の「金型部品」の3つ。開発は2014年頃からスタートし、2016年から「金型部品」、2017年から「ラピッドプロトタイピング」(米・PROTOLABS – プロトラブズ – に生産委託)、2019年1月から「FAメカニカル部品」の板金部品、同3月から切削プレートのサービスを開始しました。

会社情報

会社名
株式会社 ミスミグループ本社
代表取締役社長CEO
大野 龍隆
住所
東京都文京区後楽2-5-1 飯田橋ファーストビル
URL
https://www.misumi.co.jp/

つづきは本誌2019年10月号でご購読下さい。

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