板金論壇

変化に対応するブランド戦略で勝ち抜く

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

LINEで送る
Pocket

ポピュリズムの台頭は経済活動にはマイナス

米中の貿易摩擦は出口の見えないトンネルに入ってしまったようです。大阪で開催されるG20の会期中に開催される米中首脳会談も、米国側に、対中貿易赤字というよりも、経済・技術の覇権を争う中国の台頭に対する根深い警戒感があることから、解決への糸口は見えず、早期決着の可能性は難しくなっています。

「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ大統領は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)からの離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)の破棄、地球温暖化対策の国際枠組であるパリ協定への不参加、多国間より2国間での貿易交渉、「宇宙軍」の創設をはじめとする軍事費の大幅な増額に加え、北朝鮮やロシアとの交渉にも強気で臨んでいます。さらに反イスラム主義を強調することで、パレスチナ問題の解決も見えず、イラン核合意からの離脱に始まったイラン制裁強化で、中東情勢も危うくなっています。

一方で、欧州では5月に行われた欧州議会選挙(定数751議席)では、各国でEUに懐疑的な勢力が議席を伸ばしました。イタリアではサルビーニ副首相が率いる「同盟(レーガ)」が第1党に、フランスではルペン党首の「国民連合」がマクロン大統領率いる「共和国前進」を退け第1党に、英国では強硬なEU離脱を目指す「ブレグジット党」が第一党になり、ドイツでは「ドイツのための選択肢」(AfD)が議席を伸ばしました。「自国第一」というナショナリズムが刺激されることで、世界中で政治はポピュリズム(大衆迎合主義)に発展する傾向が強まっています。

このことは世界経済にとっては決して好もしいことではなく、経済協力開発機構(OECD)は5月末に、2019年の世界経済成長率見通しを3月時点と比べ0.1ポイント低い前年比3.2%に引き下げました。昨年11月に見通しを下方修正して以来、3月そして5月と相次いで見通しを引き下げ、世界経済が良い方向に進んでいるとはとても言えない状況です。米中貿易摩擦の拡大や英国の合意なきEU離脱、債務増大による金融の脆弱性などリスクが積み上がる中、経済状況は悪化する傾向となっています。

世界の半導体市場はITバブル以降最大の落ち込み懸念

こうした中で半導体の主要メーカーで構成する団体、世界半導体市場統計(WSTS)は6月上旬に、2019年の市場規模が4,121億ドル(約44.7兆円)と、前年比12.1%減少するとの予測を発表しました。昨年秋の予測では2.6%の成長を見込んでいましたが大幅に下方修正しています。今回の減速は2017~2018年に高い成長が続いた反動もあるとはいえ、減少率はリーマンショック後(2009年)の9%減を上まわり、ITバブルが崩壊した2001年の32%減以来の水準となります。

5月初旬頃までは、半導体需要が底入れするとの見方が有力で、インテルをはじめとした大手半導体メーカーも、6月末までに主要顧客の在庫調整が終了することにより、7月以降から出荷が上向き、12月のクリスマス商戦に向けて2019年後半からの市場の回復が期待されていました。こうした見込みから板金業界に影響のある半導体製造装置業界は、9月以降の市場回復を見込み、サプライヤーに増産を内示する動きすら見えていました。

しかし、米中貿易摩擦の激化、ファーウェイへの制裁措置発動により、そうした楽観的な見方は急速に後退、年内の市場回復は見込めないとの見方が強くなっています。「市場が回復する秋以降まで、じっと我慢」と語っていた板金サプライヤーも、比較的好調な医療機器や食品機械業界に向けた営業開拓を強化する傾向が顕著になっています。

つづきは本誌2019年7月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

板金論壇記事一覧はこちらから