板金論壇

台湾の政治・経済・企業経営に学ぶ

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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「独立か」「中国との統一か」政治の狭間で揺れる台湾の経営者

毎年、春と秋に台湾板金業界の取材に出かけているが、そのたびにいろいろな刺激を受けてくる。今回訪問したのは4年ほど前に取材させていただいた高雄・台南・台中のお客さま。2020年の総統選挙を控え、独立か、中国との統一かで揺れる政治のあおりを受けて経営者の心も揺れている。

高雄市の板金工場

高雄市では、昨年11月の統一地方選挙で国民党の韓国瑜候補が与党・民進党候補を大きくリードして初当選した。高雄市の人口は277万人で台湾第3の都市。外省人の多い台北に対して、本省人の多い高雄は野党的色彩や台湾人としてのアイデンティティーが強く、国民党候補が高雄市長選で勝利をおさめるのは20年ぶりとなった。

韓候補は「台湾の独立か、中国との統一か」にこだわるよりも経済振興に重点的に取り組み、「眠れる巨人である高雄市を蘇らせる」と市民に約束。従来の慎重で堅実なイメージから若くて豊かな町への転換、汚職のないクリーンな市政、市の国際化の3点を目標に掲げた。

そんな高雄市では、豊かさを求めて加工受託企業からメーカーへと転身する板金工場を取材した。4年前に比べて社員数が1.8倍に増えたほか、創業20周年の節目となる昨年末には、高雄市が造成した工業団地に第1期工事で新本社工場を完成、第2期・第3期工事で工場を増築し、5年後には社員数を200名以上にする計画だという。

もともと建築金物類の板金加工・組立を手がけていたが、高層化が目立つ台湾の建築市場に対応してカーテンウォール製造を開始、今では立派なカーテンウォールメーカーになった。競争の厳しい業界の中、非価格競争分野である“品質”にこだわり、建築部材の材料から製品に至るまで、その強度を保証するために、“試験所認定”と呼ばれる、製品検査や分析・測定などを行う試験所や計測機器の校正業務を行う校正機関に対する要求事項を定めたISO17025の認証を取得。試験所認定機関であることをPRし、自社製品の“品質”の確かさをアピールし、自社製カーテンウォールの販売を伸ばしていた。

さらに同社が立地する工業団地内に建築金物製造に関連する企業を集積した建築金物団地の創設を計画し、「高雄市」の存在感を高める努力をしていた。

新工場には20人ほどが座れるスタジオがつくられている。そこには総経理が35年来愛用してきたベースとギター、ドラムセットが置かれており、総経理は手が空けばスティックを握ってドラムを叩き、気持ちを高めていた。

つづきは本誌2019年5月号でご購読下さい。

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