Interview

板金部品の最適調達で20%のコストダウンを実現

受発注プラットフォーム「CADDi」を運営 ― 3次元モデルなら7秒で自動見積り

キャディ 株式会社 代表取締役 加藤 勇志郎 氏

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画像:板金部品の最適調達で20%のコストダウンを実現加藤勇志郎氏

キャディ㈱は「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げ、2017年11月から板金部品の受発注プラットフォーム「CADDi」のサービスを開始した。顧客が板金部品の3次元CADデータをアップロードし、材質・板厚・数量・納期などのパラメータを入力すると、わずか7秒で見積り金額が表示され、「発注」ボタンを押すと、見積りどおりの金額・納期で最適なパートナー企業に手配される。

自動見積りシステムを開発したのは、米国・スタンフォード大学で電子工学を専攻し、ロッキード・マーティンやアップルでエンジニアとして活躍した小橋昭文氏を筆頭とするエンジニア集団。C++17やRustといったプログラミング言語で独自開発されたアルゴリズムによって、3次元CADデータを自動解析・工程分解し、諸条件から提携加工会社(パートナー企業)各社の製造原価・納期を算出、最低コスト・最短納期のパートナー企業へ自動的に最適発注する。

発注企業にとっては、調達部門が日々忙殺される外注管理から解放されるうえに、最適調達によってコストが従来比で20%程度下がり、納期も短縮される。パートナー企業にとっては、「相見積りなし」「黒字保証」「支払いサイト1カ月」により確実に利益が出る仕事を確保できるうえ、多くの時間を費やしてきた見積り作業から解放される。

こうした自動見積りシステムの質の高さとCADDiのビジネスモデルの将来性が評価され、2018年12月にはベンチャーキャピタルなどから総額10億円超の資金を調達。今年1月には自動見積りシステムとビジネスモデルの両方で特許を取得した。

3月時点でのサービス利用者数は3,000社を超え、全国のパートナー企業は100社に達した。売上高は毎月30%ずつ伸びており、四半期で倍増というハイペースで急成長中。今春には板金部品だけでなく金属・樹脂の切削加工品にも対応する予定で、2021年9月期を目標に年商300億円企業を目指す。

東京大学経済学部を卒業し、外資系コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーで戦略調達のコンサルタントとして活躍しながら、若干26歳で同社を立ち上げた加藤勇志郎氏に話を聞いた。

大手外資系コンサルタントから転身・創業

― 前職のマッキンゼーでは、コンサルティングのマネージャーまで務めました。なぜ起業を決意されたのですか。

加藤勇志郎社長(以下、姓のみ) マッキンゼーでは、製造業の調達分野を担当しました。お客さまは、鉄道車両や船といった大型輸送機器、建設機械、医療機器、プラントなどを手がける年商数兆円規模の大企業が中心でした。

巨大なアッシー単位で取り扱うので、個々の部品の調達まで踏み込むことはほとんどありません。しかし、部品調達は、バリューチェーン全体でかかるコストの大半を占めています。にもかかわらず、部品点数が多すぎて、それらすべてをコスト分析し、最適なサプライヤーから調達することは極めて困難、手作業では工数の面でほぼ不可能です。

調達の担当者は、1人が1日あたり図面400枚、1分に1件くらいのペースで図面を処理しなければなりません。とてもさばききれないので、近場のサプライヤーに何百種もの部品をまとめて丸投げすることになります。

しかし、多くのサプライヤーにとって「本当に得意な加工」は多くありません。自社でつくれないものや苦手なものは近場の協力会社に委託することになりますが、「近場」という制約が入った時点ですでに“最適調達”ではありません。トータルコストは上がってしまい、調達担当者はそれを懸命に買いたたきます。買いたたかれる構造であるがゆえに中小製造業は消耗し、75%が赤字会社ともいわれます。

製造業におけるバリューチェーンではさまざまなイノベーションが起こっていますが、こと部品調達に関しては100年以上、目立ったイノベーションが起こっていません。こうした状況を、テクノロジーを活用することで打開したいと考えたのが、キャディを起業したきっかけです。

画像:板金部品の最適調達で20%のコストダウンを実現受発注プラットフォーム「CADDi」のビジネスモデル

板金部品は最適マッチングの意義が大きい

― 部品調達と一口に言ってもさまざまな種類がありますが、なぜ板金部品を選ばれたのでしょうか。

加藤 板金部品は、自動化によって最適なマッチングをサポートする意義がとりわけ大きい分野だと考えました。鉄道車両であれば、構成部品の30~40%が板金部品ですが、製造コスト全体に占める割合は20%を切ります。1点1点のコストは安く、種類が極めて多いのが、多品種少量生産の板金部品の特徴です。そのため、調達担当者1人で何万点もの板金部品を調達することになり、ボトルネックになっていました。

― 最適調達のために、メーカーの枠を超えて同じ部品を同一のサプライヤーから集中購買する動きもみられます。

加藤 調達先を1社にまとめる動きがあるとしたら、その会社でしかつくれないような部品 ― 加工が特別難しい部品や特殊な部品に関してだと思います。しかし、そういった特殊な部品はわずかで、90%以上は汎用的な部品です。当社が扱っているのは特殊な5%でなく、汎用品にちかい95%。調達担当者が一番困っている領域です。

― パートナー企業100社とサービス利用者3,000社の傾向を教えてください。

加藤 パートナー企業は、10~20人の規模が約50%、20~50人が20~30%、9人以下が10~20%です。

お客さまは、今のところ半分くらいが産業機械メーカーです。最近は、仕事量がオーバーフローした板金企業が横請け先をさがすために利用するケースも見られます。

売上の90%以上は「試作以外」です。ここには単品・量産品・リピート品も含まれます。試作の売上は10%以下ですが、件数はそれなりにあります。機密性の高い重要部品や、ラフスケッチをもとにつくりかたから一緒に考えるような案件はほとんどありません。そういう仕事は当社を通さず、サプライヤーと直接やりとりしていただく方が合理的です。

画像:板金部品の最適調達で20%のコストダウンを実現「CADDi」を使用することによる発注者・加工会社のメリット(キャディの会社説明資料より編集部作成)

会社情報

会社名
キャディ 株式会社
代表取締役
加藤 勇志郎
住所
東京都墨田区東駒形2-22-9
電話
03-4405-4407
URL
https://corp.caddi.jp/

つづきは本誌2019年4月号でご購読下さい。

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