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「第8回 経営者フォーラム」開催

職人の誇りを取り戻す企業ブランディング

「二代目板金屋、町工場のチャレンジとイノベーション」

株式会社 山崎製作所 代表取締役社長 山崎 かおり 氏

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画像:職人の誇りを取り戻す企業ブランディング山崎かおり氏

第8回目となる「経営者フォーラム」(主催・職業訓練法人アマダスクール)が昨年12月7日、FORUM246(神奈川県伊勢原市)で開催され、㈱山崎製作所(静岡県静岡市)代表取締役社長・山崎かおり氏が「二代目板金屋、町工場のチャレンジとイノベーション」と題した講演を行った。参加者は、7カ所の中継先を合わせて78名となった。

山崎製作所は「社員の誇りを、板金加工業の職人の誇りを取り戻す」を信条に掲げ、さまざまな改革を実施。2015年にはプロダクトブランド「三代目板金屋」を立ち上げ、「ORIGAMI」「KANZASHI」といった金属ならではの魅力を生かした自社商品を企画・製造・販売している。

以下、山崎社長の講演内容を一部抜粋して紹介する。

経営者になるつもりはまったくなかった

小さいころから工場を見て育ったからといって、機械や工場が好きになるわけではない。むしろ私は大嫌いだった。経営者になるつもりはまったくなかった。1991年に入社してからも、その気持ちは変わらなかった。2001年に売上全体の80%を占めていたお客さまが倒産したときも、「大変だな」と横目に見ている程度だった。

しかし、2008年にリーマンショックが起きた。売上は半分ほどにまで落ち、仕事もない状態となった。社員には週3日休んでもらい、国から雇用調整給付金をもらった。なかなか状況が改善せず、社長からは「今なら負債も背負わなくてすむし、会社をたたもうか」という話も出るようになってきた。

それまで私は、経営について考えたことはなかった。しかし、「会社をたたむ」と聞いたとき、初めて「この会社がなくなったら、社員たちはどうなってしまうんだろう」という思いに至った。そして、社員たちの働く姿をまじまじと見つめた。「この人たちの生活を守らなきゃいけないんじゃないか」「それができるのは私しかいないんじゃないか」という思いが湧き上がっていった。それから、社長だった父に直訴して、事業を引き継ぐことになった。

  • 画像:職人の誇りを取り戻す企業ブランディング山崎製作所が目指す社員全員参加型の“円”の組織
  • 画像:職人の誇りを取り戻す企業ブランディング山崎製作所のスタッフ。役員含め24名のうち、男性は18名、女性は6名。20代が7名と、1/3を占める。さまざまな改革により、役職・性別・工程に縛られない活発な交流が生まれ、仕事中も休み時間も声の絶えないにぎやかな会社となっている

挑戦し続けることは進化すること

それからは、さまざまな改革を並行して行った。とにかく良いと思ったことはすぐに実行した。挑戦と挫折を繰り返し、これはダメだと思ったらすぐに方法を変えた。時間がないと焦る気持ちが強かったんだと思う。次々に新しいことに挑戦した。挑戦し続けることは進化することだと肝に銘じて改革を行ってきた。

まず経営のことをまったく知らない状態だったため、中小企業家同友会で経営者としての勉強を始めた。内部環境と外部環境、これまでの歴史とこれからの未来、板金業界のことや世界のことなどを勉強するうち、次第に経営に対する思いが固まってきた。

また、工程分析をしなければいけないということにも気づいた。そのころ当社は、お客さまからの問い合わせがあった製品を工場中走りまわって探すような状態だった。社内で会議なども行ったが、改善ポイントがわからなかった。そこでアマダに協力を依頼し、工程分析をしてもらった。分析結果に基づいてボトルネックを発見してからは、ボトルネック工程の改善のため、社員全員で機械のプレゼンを聞き、導入する機械を決めた。

このとき私は、生まれて初めて借金をした。子どももまだ小さかったので、家を取られてしまうかもしれないと考えると怖くて、1週間くらい眠れない日が続いた。

画像:職人の誇りを取り戻す企業ブランディング左:講演会の後の懇親会では、同社の人気商品「KANZASHI」が展示された/右:「KANZASHI」をつけた山崎部長。機能にもこだわり、1本でも髪がまとまる

つづきは本誌2019年2月号でご購読下さい。

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