特集

2019年を展望する

主要業種別トレンド分析

世界経済の動向次第で景気は大きく変動

国内は堅調な回復が継続、海外は不透明

LINEで送る
Pocket

画像:世界経済の動向次第で景気は大きく変動盛況だった「第29回 日本国際工作機械見本市」(JIMTOF 2018)

アベノミクス効果で回復軌道に

東京での五輪開催が決まる前年、2012年末に発足した第2次安倍内閣は、デフレからの脱却を目指す新たな経済政策(アベノミクス)を発表し、日銀は「異次元緩和」と呼ばれた大胆な金融緩和策を実施した。その結果、株価は上昇、為替市場も安定し、日本の景気はゆるやかな回復軌道に乗った。

「失われた20年」ともいわれる経済の長期低迷で、先ゆきの不透明感を増していた日本経済に明るさが見え始めたところに、東京五輪の招致が決まり、2020年の東京五輪までは安定的な成長を実現できる、という期待を多くの人々が持つようになった。アベノミクス効果もあって、国内のムードは一変した。マインドが明るくなれば景況感も改善していく。東京五輪に向けた公共投資や企業の設備投資も活発になった。

減速が明らかな中国経済

しかし、米国・トランプ大統領の自国第一主義による保護主義的政策の強化によって、夏以降、米国・中国双方の貿易摩擦は覇権争いにまでおよび、“新冷戦”の始まりといわれるようになった。

その影響もあって、中国経済は供給過剰を抑制する生産調整に入った。さらにスマートフォンの販売不振により、フラッシュメモリーなどの半導体産業の景況も悪化し、中国国内では設備投資を当面控える動きも現れ、中国経済の減速が明らかになった。

さらに欧州では英国のEU離脱(2019年3月29日)が迫り、「無秩序離脱」(何の合意もないままに離脱する)の可能性が高まっている。英国・EU間の2017年のモノの貿易総額は4,232億ポンド(約62兆円)。「無秩序離脱」なら、英国のGDPは15年間で最大10.3%(約31兆円に相当)減り、EUも域内GDPが長期的に約1.5%下がるとの試算もあり、世界的に企業マインドを萎縮させるおそれがでてきた。

2019年10月には日本でも消費増税が予定されている。2014年の消費増税後、たびたび増税を先送りにしてきたツケがここで出てくる可能性も指摘されている。

2030年問題を抱える日本の課題

さらに日本では、65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が30%に近づいている。2030年には日本の総人口、約1億1,912万人の31.1%にあたる約3,715万人が65歳以上の高齢者となるという試算が出ていて、3人に1人が65歳以上の高齢者となる。生産年齢人口(15歳から64歳の人口)は、2015年には7,728万人存在していたが、2030年には6,875万人と10%以上の減少が見込まれている。

労働力が減少することで日本の経済活動は鈍化、GDP(国内総生産)の低下が懸念される。国際通貨基金(IMF)は11月末に、日本は40年後には人口減少によってGDPが25%超減少する――というショッキングな予測を公表した。「2030年問題」まで視野に入れると、日本の景気はポスト五輪を待つまでもなく、2019年以降に一段と情勢がきびしさを増すことが確実で、その対応が迫られている。

深刻な人手不足を背景に、外国人労働者の雇用を増やすため、入管法改正が臨時国会で与党の賛成多数で可決成立した。新制度を導入する2019年度には14業種で最大約4万8,000人、5年間で最大約35万人、受け入れる見込みとなっている。

さらに、事業承継という課題を背負った中小企業では、後継者不足で廃業・休業を迫られる企業が急増すると懸念される。これまで培ってきた技術や技能が、継承相手がいないことで、霧散することになりかねない。こうしたなかで中小製造業の間では、IoT技術を活用する動きが加速している。

ここでは、製品の板金比率が比較的高い12業種を抽出して、2019年の見通しを分析する。

工作機械

2019年は前年比減も予測される工作機械受注

画像:世界経済の動向次第で景気は大きく変動工作機械(国産分)の受注金額推移/一般社団法人日本工作機械工業会

日本工作機械工業会は、昨年9月に2018年の工作機械受注額見通しを前年比12.4%増の1兆8,500億円に上方修正、1兆6,456億円だった昨年に続き、2年連続で過去最高を記録する。国内外ともに投資意欲が旺盛で、年内は好調が続くと予想したからだ。

しかし、10月の受注総額は、前月比9.0%減、前年同月比0.7%減の1,396億円となり、14カ月ぶりに1,400億円を下まわった。内需は、前月比10.5%減、前年同月比1.7%増の577億円で、8カ月ぶりに600億円を下まわった。外需は、前月比7.9%減、前年同月比2.4%減の820億円となった。さらに11月の受注総額も1,400億円を下まわっている。その結果、9月に上方修正された2018年の受注見込み額1兆8,500億円達成は困難になり、総額では1兆8,000億円超えとなった模様である。工作機械受注は変態点をむかえた。

つづきは本誌2019年1月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

特集記事一覧はこちらから