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「働き方改革」を通じて「Society 5.0」を考える

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2019年、あけましておめでとうございます。今年の干支は己亥(つちのとい)といい、「次の段階を目指す準備をする年」とされているようです。4月30日に天皇陛下が退位、翌5月1日に皇太子さまが即位され、天皇陛下は「上皇」、皇后さまは歴史上使われたことがない「上皇后」となられるほか、秋篠宮さまは皇位継承順位第1位を意味する「皇嗣(こうし)」となられます。「新しい時代をむかえる準備が行われる年」ということで、干支に相応しい年だと思います

今号の特集でも紹介していますが、2019年の経済情勢は海外の動向次第で大きく変わる波乱の年になる気がしています。すでに日本は総人口が減少し始めており、高齢化と労働人口の減少という課題をどのように解決し、どうしたら持続的な経済成長を続けていくことができるのか、考えなければいけません。

政府は、これまでの「情報社会」(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分だったとして、第5期科学技術基本計画で「Society 5.0」を提唱しています。背景として、これまでは人間の能力には限界があるため、あふれる情報から必要なものを見つけて分析する作業の負担が大きく、年齢や障害などによる労働・行動範囲に制約がありました。少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対してもさまざまな制約があり、十分に対応することが困難だった、としています。

Society 5.0では「Connected Industries」によって、ヒトとモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服できる ― また、AIにより必要な情報が必要なときに提供されるようになり、ロボットや自動運転技術などの進化で、少子高齢化や地方の過疎化、貧富の格差などの課題を克服していくとしています。こうした社会の変革を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望を持てる社会、世代を超えて互いに尊重しあえる社会、一人ひとりが快適に活躍できる社会が生まれていくとしています。

今年から「働き方改革」が本格化しますが、「働き方改革」は労働時間だけの問題ではなく、「労働の質が変わる」ことを意味しています。

これまでは人間が情報を解析することで価値が生まれてきました。これからはビッグデータをAIが解析し、その結果がロボットなどを通じて人間にフィードバックされることで、これまでにはできなかったことが可能になり、新たな価値が生まれてくる ― そんな社会を目指すことになります。

当然、AIやロボットによって、これまで「人の手」が行ってきた仕事は順次置き換わっていきます。慢性的な人手不足が懸念される日本では、AIやロボットの導入は人手不足を乗り越えるための重要な手段となり、生産性を大幅に高める効果も期待できます。仕事の棲み分けが進み、人間は血の通った「人の手」だからこそ価値がある仕事、「人の手」が相応しい威力を発揮する分野に能力を活かすことも可能になっていきます。

一方、人手不足を補う以上に、余剰人員がふくらみ、失業率が上昇傾向に転じる懸念もあります。入管法が改正され、外国人労働者が日本で働く機会が増えていくことを踏まえると、今後は多民族が共生していくダイバーシティ社会になっていきます。今号の「新春アンケート調査」をみてもそうしたことを予感させる結果となっています。

改めて2019年は、「働き方改革」を通じて「Society 5.0」をむかえる準備を始める年にしていかなければいけないと思います。

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