視点

女性活躍社会実現のために

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8月号の巻頭インタビューに登場された「ものづくりなでしこ」渡邊弘子代表幹事(富士電子工業㈱・代表取締役社長)は、第三回ものづくりなでしこ通常総会の挨拶のなかで「いつか性差に関わりなく、女性が評価される社会がくれば『ものづくりなでしこ』の存在意義はなくなるかもしれない」と話しておられた。

「女性」というだけで、差別を受け、チャンスを失うことを経験した方は私の周りにもいるが、最近は世間の認識も変わり、自由に羽ばたく女性も増えてきて、社会が「ダイバーシティ」を目指すなかで、女性を含めた多様な人材が日本の社会に風穴を空けはじめている。

先日、お目にかかった研究職の女性はすでに管理職で、研究所内のダイバーシティ推進室の総括主管を兼務されるなど、専門の研究分野の仕事とともに女性が活躍できる社会をつくることにも力を入れておられた。中学生と小学生の2児の母であり、銀行マンのご主人をサポートする妻として、そして研究者としても縦横無尽に活躍されていた。

最近は女性研究者の活躍をサポ-トするため、各研究機関が所内に託児所を設置したり、有給休暇を1時間単位で取得できる制度や、男性も育児休暇を最低でも1カ月以上は取得させる制度を導入したりと、以前よりは働きやすくなっているようだ。

ただ、今回の「働き方改革」でも問題となったが、研究職はもともと裁量労働でなければ成果を出しにくい職場のため、労働時間に制限を設けるのが難しく、女性研究者にとっては厳しい職場環境でもあるようだ。

一方で、最近は中小企業でも人手不足に対応してさまざまな制度を導入する企業が現れている。

平成28年4月1日からは、女性が職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備することを目的とした「女性活躍推進法」が全面施行された。常時雇用する労働者300人以下の中小企業は努力義務となっているが、女性活躍に向けて本気で取り組むことが求められている。

同法の施行に対応したある企業では、半日単位で有休を取得できる制度、結婚・出産・育児を理由とする退職者の再雇用制度、夏休みなどの長期休暇中に子連れ出勤できる体制づくり、メンタル面のフォローのための産業カウンセラーの設置などに取り組み始めた。

また、ある企業ではパート社員を正社員として登用するキャリアコースを新設した。パート社員のなかには、時間に制約があるためテキパキと時間内に仕事をこなすスキルを持ちながら、低学年の子どもの放課後問題や介護問題などから長時間拘束に躊躇し、なかなか正社員登用に希望を出せなかった人たちもいる。能力はあっても「時間」がネックになっていると知り、この会社では短時間正社員コースを創設した。また、どのようなパート社員が、どうしたら正社員になれるかという正規登用の規定を作成。これまでの経験を生かして、さらに活躍したい女性に一段上のチャレンジができる職場であることを公開していた。

また、従業員数が20名以下という企業は、シングルマザーに「次世代育成手当」として養育中の子ども1人あたり月2万円を支給。すでにこの制度を活用して3名の女性が入社、戦力になっていた。

「シングルマザーのなかには、子どもを一人前に育てたいという責任感が強く、しっかりと仕事をして教育費を稼ぎたいという目標を持っている人も多い。その心意気に賛同するとともに、キャリアを築いてもらうのが狙いです」と、その企業経営者は語っていた。

人材不足だから、労働力人口が減少するからというネガティブな理由ではなく、「人財」視点でポジティブな女性活躍社会を築いていく必要があると思います。

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