板金論壇

モノづくりのIoTプラットフォーム構築の課題

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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工場のIoT基盤の連携機能の共同開発

モノづくりのIoTプラットフォームを提供してきたファナック、DMG森精機、三菱電機の3社に日立製作所を加えた4社が、共同で連携機能の開発に乗り出すことになった。これは経済産業省の2017年度補正予算で行われる「産業データ共有促進事業」のうち、2018年6月が締め切りの2次公募で、4社が申請した「製造プラットフォームオープン連携事業」に、1億円の助成金が採択されたことから、連携機能の開発が明らかになった。

連携機能の開発によって、ファナックの「FIELD system」、DMG森精機の「ADAMOS」、三菱電機の「Edgecross」という3つのIoTプラットフォームの間でデータのやり取りできるようにすることを目指す。これによって、異なるメーカーの加工設備やFA機器を使っていても、IoTプラットフォームを活用して、モノづくり現場をつなぐことにより、生産性向上や技能伝承といった現場力の強化やバリューチェーンの全体最適化が実現できるようになる。

これまでの⼯場向けIoTプラットフォームでは、2016年からFA機器やソフト開発の主要企業を巻き込んだ主導権争いが続いていた。ファナックはNTTグループやAI開発企業のPreferred Networksなどと、DMG森精機はドイツのカールツァイスやSoftware AGなどと、三菱電機はオムロンや日立製作所、NECなどとそれぞれ連携していた。しかし、それぞれの陣営の間での争いはユーザー企業だけでなく、工作機械メーカー・FA機器メーカー・IoT関連企業にとってもマイナス。ソフトの重複開発などが発生するうえに、国際競争力が弱まることも考えられる。

そうした点からすれば、今回の決定は一歩前進といえる。しかし、1億円の助成金だけで連携機能を開発することができないのは明らかで、各陣営がそれぞれどのように開発費を負担し、どのように役割を分担するのかも明確にしなければならない。

経産省主導で「オールジャパン」結成を目指す

報道では、今回の連携機能の開発は、4社の企業トップを集めた席上で、経済産業省・世耕弘成経済産業大臣が要請したといわれている。

IoTを活用したモノづくりに関連して「オールジャパン」で対応できなければ、ドイツはむろんのこと「中国製造2025」を掲げ、国を挙げてIoTを活用したモノづくりを開発し、製造強国を目指す中国にも遅れを取ってしまう――との懸念が出ている。生産性改革を掲げる政府が主導して「連携は不可欠」という道筋をつけ、予算をつけたのが実態といわれている

ところが筆者は過去の経験から、どうしても裏読み・深読みをしてしまう。なぜなら「オールジャパン」という“冠”が付いたプロジェクトで成功したことは極めて少なく、一定期間を経て予算を消化すると、そのまま消失する例が多い。

結果として、案件を主導する政治家や官僚が在任中にどれだけ予算をぶん捕り、どんな事業を行ったのかという業績評価のポイント稼ぎで終わってしまっていることに問題があると感じている。

つづきは本誌2018年9月号でご購読下さい。

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