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食品衛生を保証するHACCPの前提となるEHEDGのガイドライン

コンサルタント・テクニカルライター/一般社団法人 日本機械学会フェロー 産業・化学機械と安全部門 食の安全委員会委員長 佐田 守弘

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画像:食品衛生を保証するHACCPの前提となるEHEDGのガイドラインHACCPとEHEDGの関係

6月13日に「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成30年法律46号)が公布された。これは従来型の品質検査による食品衛生管理に代えて、HACCP(ハサップ)方式による衛生管理を行う内容である。

しかしHACCPは単独で成立するものではなく、GMPが前提である。そのGMPが求める食品生産設備の衛生安全性を具体的に示しているのが、今では国際基準となっているEHEDG(イーヘッジ)のガイドラインである。ここではEHEDGとそのガイドラインについて紹介する。

GMP 「Good Manufacturing Practice」の略で、製造所における製造管理、品質管理の基準のこと。原材料の入荷から製造、最終製品の出荷にいたるすべての過程において、製品が「安全」につくられ「一定の品質」が保たれるよう定められている。

HACCP方式による衛生管理

従来の食品衛生管理の手法は、サンプリングによる微生物等の衛生管理方式であった。一見妥当な方法に見えるが、この方式は検査をすり抜ける不良品が発生する可能性を有している。そのおそれを排する品質管理手法として考え出されたのがHACCP(ハサップ)方式である。

HACCP方式は米国における宇宙食開発に端を発している。宇宙には医師がいないので、万一の食中毒も許されないからである。その後HACCPは国際的な食品規格CODEXにも記載され、衛生管理の国際標準になっている。

日本においても、この国際標準に沿ったかたちで行われたのが、今回の食品衛生法の一部改正である。なおHACCPは1980年代には日本でも知られており、その当時から先進的な食品企業では品質管理と工程管理に導入されていた。

今回の食品衛生法の一部改正では、HACCP方式による品質管理が義務化された。なお、施行は1年程度後になると思われるが、6月の公布時点ではまだ決められていない。

画像:食品衛生を保証するHACCPの前提となるEHEDGのガイドライン永久接合部に関する構造例(全周連続溶接)

HACCPとEHEDGの関係

HACCPに関しては今さら説明するまでもなく広く知られていることであるが、簡単に言えば、食品製造プロセスにおけるHA(危害分析)に基づいて摘出したCCP(重要管理点)を管理・記録することによって、製造される食品の衛生性を担保する方式である。

ではHACCPだけを取り出して実施していれば食品の衛生性は担保されるのか。その答えは「否」である。

CODEXにも明記されているとおり、HACCPはGMPを前提にして行われる管理手法である。食品のGMPを簡単に言えば、食品は衛生的な施設・設備によって衛生的な方法で製造されなければならないと定めているものである。

では衛生的な施設や設備、また衛生的な製造方法とは具体的にはどのようなことなのか。食品衛生に関する法令で言えば、食品衛生法とその関連法令をはじめとして、JIS B 9650シリーズなどのさまざまな規格・基準などにそのことが記載されている。しかしながら、ほとんどの法令や規格・基準では食品安全と食品衛生に関わる内容はそのほとんどが抽象的な表現であり、具体的に何をどうすれば良いのかがわかりにくいきらいがある。

食品製造における衛生安全性に関して、詳細かつ具体的に記載しているのが、欧州で生まれたEHEDG(イーヘッジ)のガイドラインである。HACCPを正しく実行するには、EHEDGに関しての知識が必須となる。言い換えれば、HACCPとEHEDGは車の両輪であり、それぞれ食品製造工場における設備(ハードウエア)と運用管理(ソフトウエア)を受け持っている。したがって、その片方が欠けても食品衛生は成り立たない。

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