板金論壇

人材育成の試みと新入社員の心意気

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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新入社員の心意気に感動

このひと月ほど、取材でお伺いした板金工場で嬉しい体験をしました。それは、この業界に足を踏み入れて1年未満という新人の方々にお会いして、その彼らの目が輝いていたこと、一心に与えられた仕事に取り組み、高度なマシンを苦もなく使いこなしていたことです。

そのうちのおひとりの前職は、料理屋の板場で料理長をやっていた板前さん、もうひとりは、昨年4月に高校を卒業して入社したピカピカの1年生でした。

おふたりとも、6軸ロボットを使うレーザ溶接の仕事を担当されていました。ワークを治具にセットして、ティーチングペンダントのジョイスティックレバーを動かしてティーチング作業、プログラム終了後には溶接ヘッドが溶接箇所を正確にフォーカスして加工できるかをTAS(ティーチンング・アシスト・システム)を使って確認しています。ヘッドと同軸で溶接線をフォーカスするCCDカメラの画像を見ながら、ヘッド中心が溶接線からズレていないかを確認し、ズレを見つければヘッドの位置を微妙に修正・補正作業を行います。この作業はロットが変わるたびに行っており、ワーク材料の塑性変形を正確に把握して、微妙な変化を補正することで、安定した高品位溶接ができるように取り組んでいます。

ティーチングに際しては、溶接箇所に微妙なRが付いていたり、材質・板厚が異なる材料を重ね、突き合わせ、すみ肉溶接したりするので、あらかじめ治具にセットする前にTIG溶接やハンディレーザ溶接機で仮付けをする必要があります。こうした作業は概ねベテランの溶接作業者が行っていますが、周長が長い溶接を行う場合には、ハンドワークの仮付けにくわえ、ロボットで仮付けするタック溶接を行う場合もあり、この作業はロボットを担当するオペレータの作業になります。

溶接変形の基礎を学ぶ

TIG溶接や半自動溶接に比べ、レーザビームを使った溶接は入熱による材料の歪みが局部的で熱影響も限定的となります。しかし、それでも長い周長を溶接する場合は入熱により、材料に反りが発生してくるので、反りを抑える対策を行わなければなりません。

溶接変形の原因は、加熱される箇所が溶接線に沿った狭い領域のため、その領域が加熱時に膨張し、周辺の加熱されない部分の拘束によって圧縮され、冷却時には収縮しようとします。そこで、加熱時に圧縮されているため、もとの長さよりも短くなろうとします。これにより溶接歪みが発生するという原理を学んでおく必要があります。おふたりとも、そうした溶接のコツはベテランの溶接作業者から教わっており、ひとつひとつ覚えながらの作業となっていました。

つづきは本誌2018年7月号でご購読下さい。

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