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精密プレス・金型の技術開発型企業

サポイン事業を活用し、基盤技術の高度化に貢献/SDE-GORIKIを活用した精密冷間板鍛造の量産をスタート

株式会社 大貫工業所

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画像:精密プレス・金型の技術開発型企業今期導入したサーボプレスSDE-1515 GORIKI。縦剛性・横剛性を強化し、安定した加工精度を維持できる。同社では精密冷間板鍛造に活用し、コンデンサ用部品(銅製)の量産に対応している(写真は同社納入前のもの)

精密プレス・金型の技術開発型企業

画像:精密プレス・金型の技術開発型企業代表取締役社長の大貫啓人氏

㈱大貫工業所は、茨城県日立市で精密プレス金型の設計・製作と精密プレス部品加工を手がける技術開発型企業。先代の大貫康雄氏が1956年に創業し、金型の専業メーカーとしてスタートした。日立製作所那珂工場との取引で電力量計の針の金型を生産していたが、金型だけでなくプレス加工にも対応してほしいという得意先の要望に応えるため、プレス部品加工にも取り組みはじめた。

それ以来、高い技術力と、精密部品の金型設計・製作からプレス加工まで一貫で対応できる強みを生かし、品質の均一性、低コスト、高生産性を追求。製品の応用分野を拡大することで、プレス技術の専門企業としての地位を確立していった。

高度成長期には、自動車・家電・オーディオ・昇降機など日立グループを中心に成長。それ以降は、自動車関係を中心に、精密機器メーカー、空気圧機器メーカー、電材メーカー、住宅資材メーカー、家庭用ゲーム機メーカーなど、多種多様な業種の仕事を手がけてきた。

1996年に大貫啓人(ひろと)社長が2代目社長に就任してからは、技術開発型企業としてのスタイルを本格的に追求。他社では対応できない複雑形状・難加工技術にチャレンジしていく。

2004年には、リチウムイオン電池ケースが「中小企業開発奨励賞」県知事賞、角型深絞り加工が「日立市地域産業創造賞」大賞を受賞。2008年以降は経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」(サポイン事業)に申請し、①「圧造成形順送プレス工法によるLED用機能部品の製造技術開発」(2008年)、②「三次元マイクロ構造加工用金型およびプレス技術の開発」(2010年)、③「高圧センサ用高感度金属ダイアフラム型導圧管の開発」(2013年)が採択を受けた。

2013年頃からはドイツで開催されるエレクトロニクス系の公共展に出展。ドイツやスイスの精密機器メーカーや光学機器メーカーとも取引を行うなど、グローバルに事業を展開している。

  • 画像:精密プレス・金型の技術開発型企業高剛性・高精度のナックルリンクプレスPDL-400。サポイン事業の補助金を活用して導入した
  • 画像:精密プレス・金型の技術開発型企業サポイン事業の一環でPDLにより加工したLED用反射枠(アルミ)。従来は主に切削加工で製造されてきたが、プレス加工により低コスト・短納期で大量生産できるようになった

「コストダウンのない製品を手がけたい」

大貫啓人社長は名門・東海大野球部の出身。プロ入りも期待される実力派の捕手だったが、父親である先代社長の意向もあって、大学卒業を機に家業に戻ることを決意。1987年に22歳で入社した。

入社直後から、営業として飛び込み営業を繰り返した。持ち前の気っぷの良さと人懐っこさで、右も左もわからないながら次々と新規得意先を開拓していった。

また、日立グループ企業の生産技術担当者のすすめで、2年間、毎日深夜まで課題に取り組み、隔週でマンツーマンの指導を受け、金型技術を身につけていった。

「私は人に恵まれました。おかげさまで27歳までには一人前になれました。2年間は深夜就寝・早朝起床の日々でしたが、苦しいと思ったことはありません。24時間野球浸けだったころの生活と比べれば、社会人の方がずっと楽でした」。

バブル崩壊後の1996年、31歳で2代目社長に就任するが、そのころから「オンリーワンの技術を開発し、他社にはできない仕事を手がけていきたい」と考えるようになった。

「一番苦しかったのはコストダウンです。厳しいコストダウン要求に、夜も眠れなくなりました。コストダウン要求のない製品を手がけたいというのが、技術開発型企業を目指した最大の動機です。それからは他社が敬遠するような仕事を積極的に引き受け、技術開発にはげんできました」。

「利益が出た仕事もあれば、失敗して赤字になった仕事もあります。いくつ金型をムダにしてきたかわかりません。しかし、そのうちのいくつかは他社に真似できない技術・工法を確立し、当社の主力製品に育ってくれました」。

代表的な製品だけでも、自動車用エアブローセンサーのノイズ防止用金具やインサート部品、携帯電話の可動箇所のスライド部品やヒンジ、半導体製造装置に使用されるターボ分子ポンプ用部品、超精密モーター向け部品、空調・空圧などの分野で用いられる配管ジョイント部品など、多岐にわたる。なかでも同社が部品を供給するエアブローセンサーやターボ分子ポンプは世界トップシェアをほこり、同社の事業を支えた。

「お客さまは当然、複数社購買や、海外へ生産シフトする場合は現地調達に切り替えることを考えます。しかし多くの場合はうまくいかずに当社に戻ってきます。製品によっては私が願っていたとおり、コストダウン要求がなくなりました」。

画像:精密プレス・金型の技術開発型企業精密冷間板鍛造による高圧センサー用金属ダイアフラム(SUS630)の加工プロセス

会社情報

会社名
株式会社 大貫工業所
代表取締役社長
大貫 啓人
住所
茨城県日立市森山町5-10-8
電話
0294-53-3821
設立
1968年(1956年創業)
従業員数
60名
事業内容
精密プレス金型設計・製作(順送金型・トランスファー型)、モールド金型設計・製作/精密プレス部品加工(自動車部品・産業機器部品・民生部品・切削レスVA部品・板鍛造部品)/ワイヤーカット・放電加工の受託/精密機械加工の受託
URL
http://www.ohnuki.co.jp/

つづきは本誌2018年5月号でご購読下さい。

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