板金論壇

世界から日本を見つめなおす

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

LINEで送る
Pocket

台湾取材から考えたこと

このたび、台湾へ出張し台湾の板金事情を取材しました。訪れたその日は、偶然にも中国で全国人民代表大会(全人代)が開幕した日で、中国の李克強首相は政府活動報告で「『台湾独立』を目論むいかなる分裂の画策や行動も断じて許さない」と、台湾の蔡英文政権に改めて釘を刺しました。今回の全人代では、2期10年を限度としていた国家主席の任期を延長し、習近平国家主席の長期政権に道を拓く憲法改正が採択され、台湾では習主席の台湾強硬路線に対する警戒感が高まっていました。

訪問したある板金企業は、台湾国防軍へ納入する操作ボックスや各種筐体を設計から加工、組立、完成まで対応、受注は活況で、2018年は前年比2ケタ増収を見込んでいました。製品の多くにアルミ素材が使われ、完成した筐体は電波漏れや防水対策から、空軍基地や海軍の艦艇に搭載される前に電波暗室でのテストや防水試験が行われ、厳しい品質検査をクリアするため努力を積み重ねていました。

人口2,300万人の台湾の製造業界は労働力人口が少ないため、法律で雇用者数の25%までは外国人労働者を雇用することが可能で、ベトナム・タイ・インドネシア・フィリピンなどから多くの実習生(外国人労働者)が板金工場で働いています。しかし、国防軍へ納入する同社では、国防上の機密保護の観点から外国人の雇用が禁止され、しかも、私的な旅行を含め大陸への渡航が厳しく制限されていました。

日本でも防衛庁や警察関連に納入される製品検査は厳しいとされていますが、労働者や海外渡航まで制限されるという話を聞くと、日本以上の緊張感を感じ、「自由度」という点でかなりの規制を感じます。

しかし、厳しい制限を受けているものの取材にはオープンで、次代の先端をゆくいろいろな製品を見せていただいた。

中台関係のこれから

今回訪問した会社の創業者でもある董事長は、中国の強硬姿勢は「これまでも、そしてこれからも変わらない。軍事力強化は今後も継続される」と判断していましたが、その一方で「ビジネスは順調に発展する」と見ていました。

また、ある業界長老は「中国が台湾を軍事的に制圧する可能性はきわめて低い」と言いながらも、「もしそうした事態になれば、台湾人も徹底的に抵抗をする。軍事力に勝る中国によって台湾は制圧されるが、台湾国防軍もミサイルを保有しており、中国に多大なインパクトを与える力を備えている。そのことは中国も十分に理解しているはず」と強気な見方を述べていました。

台湾では、昔から「兵役を終えないと一人前の男になれない」と言われています。国民平等に18歳以上の男子には兵役の義務があり、ほとんどの男子には兵役経験があります。兵役期間は以前は2年でしたが、今は1年に縮まり、さらに2014年には徴兵制が廃止となり、全募兵制(志願制)に変わりました。しかし全募兵制になるとはいえ、兵役を志願しない男性も4カ月の軍事訓練を必ず受けなければならず、板金工場の事業継承者も必然的に兵役や軍事訓練を経験しています。

つづきは本誌2018年4月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

板金論壇記事一覧はこちらから