Interview

「日々鍛錬 日々成長」

「板金加工の専門家集団」のドメインがあれば未来は拓ける

協和プレス工業 株式会社 代表取締役社長 野村 壮吾 氏

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画像:「日々鍛錬 日々成長」野村壮吾氏

協和プレス工業㈱は会社設立の翌年、1964年から三菱電機㈱冷熱システム製作所(和歌山製作所)と取引を開始。業務用空調機用板金・プレス部品加工を手がけ、売上の90%弱が冷熱システム製作所関連の仕事となっている。50年以上の継続取引の中ではたびたび、納期管理優良会社・品質管理優良会社・優秀協力会社として表彰され、現場改善事例発表大会でも優秀賞を受賞するなど得意先からの信頼も高い。

今から24年前の1994年に35歳で3代目社長に就任した野村壮吾社長は、九州芸術工科大学工学部を卒業後、京都芸術短期大学ビジュアルデザインコースの助手を務めたのちに同社へ入社した。

先々の人手不足を見越して1996年から中国人実習生を受け入れ、1998年には板金加工ネットワークシステムASISネットワークを導入した。ブランク工程には、12段11列の自動倉庫MARSに直結し、金型交換装置を備えたパンチングマシン3台を導入。変種変量生産に対応したネスティングソフトWinNESTを活用して24時間連続稼働を開始するなど、先進的な取り組みを行ってきた。

1999年には曲げのネットワーク化にも取り組み、ネットワーク対応ベンディングマシンを業界に先駆けていち早く導入。2006年には曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bendを導入して、曲げの外段取り化にも挑戦していった。

「板金加工の専門家集団」としてのスキルアップを目指すため、全社員に技能検定(国家検定)の受検を奨励し、現在では60名の社員の半数、約30名が工場板金技能士1級・2級の国家資格を取得。平成29年度(開始は30年)も女性社員を含む5名の社員が1級・2級の資格取得を目指す。

「ものづくりで社会に貢献する」 ― を企業理念に掲げる同社の今とこれからについて、野村社長に聞いた。なお、野村社長は大阪府シートメタル工業会の会長でもあり、板金業界の発展に強い情熱も持っている。

2020年までは微増が期待できる

―まず直近の業況と2018年の見通しについてお尋ねします。

野村壮吾社長(以下、姓のみ) 繁忙感があります。日本の業務用空調関連は東京五輪に向けた都市開発などによる新築需要に加え、セントラル空調からマルチエアコンによる個別空調への切り替え需要もあり、市場は成熟しながらも2020年までは微増が予想されます。

ポスト五輪への不安もありますが、耐震基準を満たしていないビルの建て替え需要なども見込まれているので、大きな落ち込みはないと思います。

海外では、中国・東南アジアでオフィスビルや店舗、ホテルといった本来の需要に加え、富裕層の住宅向け空調として小型マルチエアコンが効率の高さから採用され、需要が伸びています。また、更新需要が中心となる欧州でも温暖化への影響という観点から、セントラル空調からマルチエアコンへと切り替える動きがみられています。

当社の得意先である三菱電機様は、2015年にイタリアの業務用空調会社デルクリマの株式を取得し、子会社化しました。デルクリマ社はデータセンター向けなどの大型施設向けの空調機器を製造しており、三菱電機様は同社を買収することにより中国・中東・インドをはじめとした同社の海外拠点を活用したグローバル展開を推し進め、総合的な空調冷熱システムメーカーを目指されています。今後、大型施設用途の空調機器に関連した仕事も期待できるので、先行きは明るいと見ています。

  • 画像:「日々鍛錬 日々成長」自動倉庫と連動して24時間稼働する3台のパンチング自動化ライン
  • 画像:「日々鍛錬 日々成長」2016年に導入されたベンディングマシンHG-8025

冷熱空調機の仕事に注力

―売上の大半が冷熱空調関連機器となっています。業種・得意先を広げてリスク分散する考えはありませんか。

野村 経営のセオリーから見るとたしかに得意先に偏りがあります。しかし、会社設立以来50年以上にわたってお取引をいただいている三菱電機様の満足度を改善することが当社の第一の課題と思っています。もちろん、営業開拓という観点からは、ほかの業種や得意先を開拓する必要があると思いますが、なかなか難しい課題です。

ただ私自身は、“変化対応力”という意味で、「板金加工の専門家集団」というドメインに適応できれば、板金需要がなくならない限り、仕事がなくなるとは考えていません。

そのためにも、当社の企業理念でもある「日々鍛錬 日々成長」の原点に立ち戻って「モノづくりはヒトづくり」を実践し、板金加工の専門家集団に相応しい技量とセンスを備えた社員を育てていきたいと思います。

画像:「日々鍛錬 日々成長」左:空調システムの室外機に使われる溶接が終了した部材/右:IoTを活用したモノづくりの一環で取扱説明書がモバイル端末で閲覧できるようになった

会社情報

会社名
協和プレス工業 株式会社
代表取締役社長
野村 壮吾
住所
和歌山県紀の川市長田中345-7
電話
0736-73-3211
設立
1963年
従業員数
60名
主要事業
精密板金・プレス加工(試作品から量産品まで対応)
URL
http://www.kyowa-p.co.jp/

つづきは本誌2018年1月号でご購読下さい。

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